ゲームざんまいの日々 子どもに自覚させるには?

中島美鈴
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 こんなに長い春休みはこれまでにあったでしょうか。

 全国でほとんど一斉に始まった休校期間に、通常なら学校で授業を受けている時間に、子どもだけで家にいて、親が帰宅するまでゲームざんまいになってしまったというご家庭もあるかもしれません。このように、すでにゲームやネットなどにどっぷりとつかってしまっているお子さんをお持ちの場合には、前回までにご紹介した「ご褒美のメリハリ作戦」の実行はかなり難しくなります。どうしたらよいのでしょう。

 大まかな手順はこうなります。

1.子どもにこのゲームざんまいを続けているとどうなるかという未来を想像させる。

2.子どもに、どんな人生を送りたいのか、成し遂げたい夢を問う。

3.希望する人生に近づけるために、ゲームとの付き合い方を決めさせる。

 どれもなかなか大きな課題ですので、数日から数カ月、あるいは数年単位でしか答えの見つからないものもあるでしょう。特に2は難航するはずです。多くの子どもがすぐには夢を答えられないものです。完全な答えである必要はありません。子どもに「そうか!その視点をもつべきなんだな。」とか「答えを探しながら生きて行こう」と思わせることができたらいいでしょう。

 各項目について解説を加えていきます。

やばいという自覚がスタート

1.子どもにこのゲームざんまいを続けているとどうなるかという未来を想像させる。

 「いい加減にゲームをやめなさい」と叱り続けても、やめられない、ずっと没頭したくなるようにゲームはできていますし、親に隠れてするようになるだけかもしれません。

 この子どもがやがて大きくなって一人暮らしをするようになったとき、だれも注意する人がいなければ、ずっとゲームをやめられない大人になるのは避けたいところです。ぜひとも、子ども自身に「ゲームとこのままのつきあいを続けていてはやばい!」と自覚させるところからスタートしたいところです。

 しかし、人間というのは、自分が夢中になっているものが、たとえ多少有害だとしても、その結果には目をつぶって没頭してしまいたくなるものです。不都合の結果など、見たくないのです。そうして考えるのを避けているのは、「怖いから」かもしれませんし、「(受験勉強など)やらなくてはならないことが面倒だから」かもしれません。だからこそ、一緒に向き合う勇気を与えたり、子どもが人生経験の少ないため想像しづらいところを補ったりすることが必要です。

 たとえばこんなかんじです。

親「このままのペースでゲームを続けていたらどうなると思う?」

子「いや、(こんなにゲームざんまいなのは)春休みだけやし。」

 子どもの即答におじけづいてはいけません。このぐらいは想定内です。

 そしてこの手の質問は、くれぐれも子どもがゲームをしている真っ最中に、横に立ってガミガミ言う状況で発するのは得策ではありません。子どもはその場をなんとか切り抜けてゲームを続けようとしか思わないからです。そうではなくて、子どもがゲームをしていない、冷静な頭の時に問いかけて下さい。聴く準備ができているときです。

休みが終わればゲームをやめられるは本当?

 そして、子どもの多くは、「(春休みが終われば)いつでも(ゲームを)やめられる」と思っています。これはアルコールでも薬物でも依存と名のつく人に共通する点ですが、「自分は十分、ゲームでもネットでもコントロールできている」と思い込んでいるのです。それは実際どうなのでしょうか?

・夕ご飯の時間なのに、ゲームを優先して食卓につかない。

・友達との約束があったのに、ゲームを優先してキャンセルする。

・やるべきだった課題をせずに、ゲームをしている。

・夜遅くまでゲームをし続けている。

 このように「日常生活における大事な家族や友人との関係や学業、睡眠などよりも、ゲームを優先していること」は、コントロールできていないといえる証拠です。「テスト前だから、ゲームの時間を減らそうとしたのに、ついついやってしまった」のように、「減らそうという努力をしても、失敗する」ことも依存の大きな特徴です。

親「そう、春休み終わったら、すっきりやめられるっていうけど、これまでゲームの時間って自分でコントロールできた?どうだった?」

とか

親「ゲームの時間を自分でコントロールできるもの?ほとんどの人が難しいらしい。できるかちょっとやってみて。」

と、一度させてみて、現状を共有していくという実証主義に出るのも手です。これから1週間ほどゲーム時間を記録することを提案し、あとでデータとして見せるというのもよいでしょう。客観的に自分を振り返ることができます。

 そうして、ゲームをめぐる現状を子どもと親で共有する作業を経て初めて、「この現状のままいけば、未来はゲームをコントロールできないかもしれない。」という認識に立てることでしょう。

 これにあと、「ゲームのしすぎで、学校に行かなくなった」「退学になった」「人間関係が破綻(はたん)した」などの大きくて決定的な支障をきたすようになると、もう完全に「依存」であるといえます。

 子ども「えーー?ぼくってやばいの?このままだと、ゲームに捧げる人生になるの?」

 このぐらい危機感をもたせ、モチベーションを上げることができればよいですね。

 次回は二つめの、「子どもに、どんな人生を送りたいのか、成し遂げたい夢を問う。」についてご紹介します。(中島美鈴)

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中島美鈴
中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。