拡大する写真・図版朝日新聞デジタルのフォーラムアンケート

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 外出を控える生活が続き、家庭によっては一日三食の献立に腐心されているかもしれません。和食、洋食、中華、エスニックと、多彩な味の選択肢がある中で、日常的に家庭で食べられてきたのが「無形文化遺産」にもなった和食。多様化が進む一方で、各地で失われつつある郷土の味もあります。毎日の食事から、和食の「現在」を考えてみませんか。

健康的で美味・糖質気になる・だしパック活用

 デジタルアンケートに寄せられた声を紹介します。

 

●自分で作る和食がほっとする

 自炊はほぼ和食です。胃腸が弱く、脂っこいものや味が濃いもの、粉ものなどで体調を崩してしまうことがありますが、和食はその点、おなかにやさしいので安心して食べられます。自分で作る和食が一番、ほっとします。(東京都・20代女性)

 

●和食より洋食

 和食よりも洋食が好きなので、食べたいと思わない。栄養価が同じであれば、伝統にこだわらずに好きなものを作って食べればよいと思う。(熊本県・20代男性)

 

●和食は塩分と糖分が多い

 我が家は一日おきに和食です。理由は健康を考えると和食は塩分と糖分(特に煮物)が多いように思いますし、洋食、中華、その他の食事は油が多いと感じます。(滋賀県・60代女性)

 

●ヘルシー、和食でやせた

 海外留学の1年間で増えた10キロは、帰国後母親の和食を食べるだけで1カ月で元に戻りました。和食はヘルシーでおいしい。それにつきます!(東京都・30代女性)

 

●器やサービスも和食文化

 和食は食べるだけでなく器やサービスなどすべてが日本の文化だと思います。(大阪府・50代男性)

●器が煩わしい

 ご飯+おかずの食事はそれぞれ器が必要になって煩わしいので、家では作りたくない。(東京都・40代女性)

●気合をいれずにつくれる

 慣れている味がやはり落ち着くし、毎日料理をする上で気合を入れずにつくれるのが良いと思います。(千葉県・20代男性)

 

●調理に時間がかかる

 調理に時間・手間がかかるイメージで作ろうと思えないのと、自分のレパートリーに和食バリエーションがないのでハードルが高い。(茨城県・30代女性)

●手間のかかるものは買う

 手間のかかるおでんなどは簡単にコンビニで買えるものになったため、家で作るよりは欲しいだけ買うものに変化しました。(奈良県・40代女性)

●和食は簡単

 毎日1日1回はご飯(和食)を食べないと落ち着かない。和食は作るのが簡単でいいと思う。生で食べるものもあるし、さっとあえるだけとか火を使わないものもある。発酵食はとても和食だと思う。大人になって色々発酵しているものを作って食べるようになった。(東京都・40代女性)

 

●糖質オフにむいていない

 日頃のご飯では、和食ということをあまり意識していません。いろんな具材と合わせやすいので自然に作っていると思います。ただ塩分や甘味(みりんとか)が気になるので、昨今の糖質オフには向いていないかと思います。(北海道・30代女性)

 

●脂質が少ない食事をしたい時に

 脂質の少ない食事を食べたいときは和食をつくります。(東京都・20代男性)

 

●だしをとる、が基本

 「だしをとる」これが和食の基本。パリで日本食レストランに行ったら、だしのないみそ汁が出てきた。まずいのなんの「こんなんが日本食と思われたら困るんだけど」と思った。(福岡県・50代男性)

 

●だしパックで手軽に

 以前はだしをひくのが手間だと感じていたけど、最近はだしパックの商品が豊富にあり、みそ汁や煮物などの和食を作るのが億劫(おっくう)でなくなりました。(京都府・30代女性)

 

●自己流レシピも立派な和食

 献立に立派な名のついたものや伝統的なもの、きちんと手間をかけたものばかりが無形文化遺産たる「和食」なのではない。スーパーで手軽に買える総菜や、不思議料理としか言えないような自己流レシピも立派な和食。食卓の数だけ和食がある。(東京都・30代女性)

 

●ゆっくりだしをとれる幸せ

 かつお、昆布、煮干しなどからだしを取る料理こそが和食。この基本のだしさえあれば、身の回りのほとんどの素材が優しい味の和食へと変貌(へんぼう)する。このだしを少しでも使えばパスタだって和風パスタとして立派な和食になる。ただし利便性を求めるばかりの忙しい現代社会においては、丁寧にだしを取る時間と余裕があればこそできる贅沢(ぜいたく)な話なのかもしれない。でもここらあたりで利便性を求めるばかりのせわしない世の中ではなく、もう少しゆっくりとだしを取れるような時間のある世の中に回帰してはどうだろうか。和食を通じて、体にも心にも、地球環境にもいい時代となるように願うばかりです。(東京都・40代男性)

 

●時間があれば作りたい

 和食はヘルシーなので普段の食事は極力和食にしたいと思ってますが、忙しい時はパンやパスタ等簡単な食事に頼ってしまっている現状です。時間があれば、漬物やみそなど手作りしたいです。(東京都・30代女性)

 

●ステレオタイプが強調されすぎ

 和食のステレオタイプが強調されすぎている。本来の和食は地域の事情に立脚した多様性の中にこそ見いだされるべきものだ。(愛知県・30代男性)

 

●行事食大切に

 祖母がひな祭りや彼岸、端午の節句や正月などの行事食を必ず作る人でした。その影響からか、母も私も行事食を作らないとすっきりしません。(献立を考える手間も省けます。)祖母が生きていた頃は、餅つきや月見団子、ひな祭りのおこしものまでなんでも家庭で作っていましたが、これらは今では買うようになりました。梅をつけたり、おせちを作ったりは、季節を感じることのできるとても大切なことだと思っています。これからも続けていきたいです。(愛知県・30代女性)

 

●祖母の味、残ってほしい

 おばあちゃんがよく作ってくれていた、白みそのあえ物や、ヌタなどが思い出の和食です。お店に行っても見当たらないことがほとんどなので、将来にもそういう家庭の和食の味が残って欲しいなと感じます。(三重県・20代男性)

男性も料理 「力み」薄まった 生活史研究家・阿古真理さん

 「和食」は、日本人が明治時代に西洋料理と出会い、区別するために生まれた言葉です。トンカツやカレーライスもその後、誕生しますが、昭和の初めごろまで、家で食べる庶民の食事は米や麦、みそ汁、漬けものが中心。洋食は都会の中流家庭の食卓に時々のぼるくらいでした。

 食卓が大きく変わったきっかけは敗戦後の高度経済成長です。戦後の食糧難の時代、復興の目標は米国のような「豊かな暮らし」。政府も栄養改善のため、肉や乳製品などたんぱく質や油脂を食べようと勧めます。農業や台所の近代化、スーパーの誕生。高度経済成長期は食卓革命でした。

 新しい洋食が流行し、核家族化が進む。サラリーマンと専業主婦世帯が増え、若い主婦の料理の先生は、母ではなく、テレビの料理番組と雑誌でした。ロールキャベツ、ハンバーグ、ギョーザ、春巻きと手間をかけた新しい家庭料理が紹介されました。子供も洋食の味に慣れ親しんでいきます。引き換えに伝統の味は伝承されにくくなりました。

 昭和40年代ごろ、危機感を持った明治・大正生まれの料理研究家は、季節の和食を丁寧に教えることに力を入れました。とても人気が出た一方で、「古い」「面倒」と反発する人もいたと思われます。だしは特に敬遠されました。こんぶやカツオで丁寧にとる黄金色のだしは日本料理のプロの技。元々、だしはもっと多様でした。イリコもあるし、魚介など、うまみのある食材を使えばそれでよかったのです。和食を作るハードルがあがり、「難しい」と印象がついてしまいました。共働きが増え、「時短」が求められればさらに料理から離れていきますね。

 ただ最近は、台所に「料理男子」が入り、和食への力みが薄まってきたように思います。若い男性料理研究家は、「正しい主婦」の心構えを教える人たちでも、お金と時間をかけた趣味の「男の料理」を教える人でもありません。もっと気軽。子供の頃から和、洋、中、エスニックと味の経験が豊富で発想が自由。だしを取らずに素材のうまみで作る和食や、和と洋の調味料を組み合わせる和食など柔軟に提案します。家庭料理の担い手が多様になれば、もっと和食は面白くなるかもしれません。和食は廃れているのではなく、進化しているのではないでしょうか。

      ◇

 あこ・まり 1968年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。著書に『「和食」って何?』(ちくまプリマ-新書)など。(聞き手・才本淳子)

拡大する写真・図版阿古真理さん

具材のうま味 だし要らず 料理研究家・きじまりゅうたさん

 和食をどう定義するか。突き詰めると難しいですね。食文化は時代によって移り変わるものだから。私は「その時に家庭でよく食べられていて、食材、調味料、調理法のどれか一つに日本のルーツがあるもの」と広くとらえています。それと、「一汁三菜(二菜、一菜でも)」を基本にした献立です。ご飯、みそ汁、トンカツの定食は和食だと。トンカツ単品だと洋食か和食か意見は分かれると思いますが。

 祖母、母ともに料理研究家という家で育ちました。調理師学校で学んだ後、母のもとでアシスタントを約4年務め、調理の補助をしました。祖母はレシピを考えるとき「食材は地元のスーパー、肉屋、魚屋、八百屋で買う」との考えを大切にしていました。誰でもどこでも手に入る一般的な食材が家庭料理の基本ととらえていたからです。母は料理する人のことを考えたレシピを発信してきました。同じ料理でも若い学生向けと大家族向けで家にある食材が違うというように。私もこれらは意識するようにしています。

 「和食は手がかかる」と気負う人が少なくないようです。一方テレビ番組や本では、「時短」とか「手軽」なレシピを求められることが多い。ですから簡単に作れる和食も積極的に紹介しています。

 だしに対する考え方がその一つです。和食に欠かせないというイメージがあります。確かにだしを使えばおいしくなります。肉じゃがを作るとき、だしを使う方もいますが、私は肉、ジャガイモ、タマネギからでるうま味があるのでそれで十分と思っている。具だくさんのみそ汁を作るときもだしは使いません。みそをとくだけでいいです。

 漬物は消費量が減っているそうですね。しょっぱいし、パン食が増えているからでしょうか。もったいない! 具材としても調味料としても便利なんですよ。たとえば白菜漬けは炒め物のアイテムとして。高菜漬けと豚肉でスープが作れます。塩分があるので味が決まりやすく、発酵のうま味があります。

 各地にロケで向かいます。過疎化や高齢化によって、集落や家庭で代々受け継がれてきた郷土料理の味が失われていくのではないかと心配です。何かできることはないか、考えています。

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 料理研究家。1981年、東京都生まれ。NHK総合「きじまりゅうたの小腹すいてませんか?」に出演中。近著に「毎日ごちそう! たまとじ」(青春出版社)。(聞き手・北村有樹子)

拡大する写真・図版きじまりゅうたさん=東京都豊島区

めんつゆ・「おかずの素」が人気

 和食のいまを、基本調味料「さしすせそ」(砂糖、塩、酢、しょうゆ、みそ)から探ってみました。

 総務省の家計調査(2人以上世帯)によると、1世帯あたりの支出金額は2000年からいずれも減少。年間の合計額も2019年は6406円で、00年比で3割減っています。

 一方、だしなどで味付けされた、つゆやたれは伸びています。00年の3638円から、19年は4876円と3割増。レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」のデータによると、「めんつゆ」をキーワードにした19年の検索数は12年の約2倍に。特に、めんつゆだけで定番の和食の味付けができる記事が人気だそうです。「さしすせそに変わり、めんつゆは万能な調味料として認知されています」(同社)。

 さらに最近は、煮魚や肉じゃがといった個別メニューに特化した「おかずの素」が受けています。しょうゆ大手キッコーマン(東京)が02年に発売した「うちのごはん」シリーズは現在、すきやき肉豆腐、鶏大根、白菜のうま煮の素など計35種類。鍋を持たない人も多いため、主にフライパンでできるおかずを提案。「一から味付けをする人は減っていますが、ご飯が進むしょうゆやみそ味のおかずは変わらず支持されています」

 一汁三菜の一汁を支えるみそも同じ傾向です。市場調査会社「インテージ」(東京)によると、みそ市場はここ10年縮小する一方でインスタントみそ汁の売り上げは伸び、19年は505億円でみそに迫る勢いに。同社は「形は変わってきたが、食卓にみそ汁は欠かせないようです」。

 江原絢子・東京家政学院大学名誉教授は「和食を作って食べたい、でも時間をかけられない、失敗したくないという思いから、便利なものを使うのもわかる」。一方で、「本当は基本の調味料でほとんどの和食の味付けができるし、実は便利。自分好みの味(家庭の味)にもできます。○○のタレといった『これがないとできない』という思いこみが定着していくのも少し怖い。失敗してもいい。自分で味を決める楽しさや工夫も忘れないでほしいです。あるもので料理することは、生きる力にもなると思います」と話します。

発酵食品 自分でつくる動き

 みそや、ぬか漬けなど和食に欠かせない発酵食品。健康志向や手軽なキットの発売などで、家庭で作って楽しむ動きも出ています。

 群馬県藤岡市の星野潤さん(38)は、東日本大震災後に足元の食を見直そうと、友人らとみそ造りを始めました。口コミで徐々に広がり、今では保育園や公民館、カフェなど全国10カ所で年50回ほどワークショップを開催。「食の安全」に加え、最近は健康志向で「腸活」「菌活」に関心をもつ人も増えたそうです。

 みそは出来上がるまで時間がかかります。「生き物を育てる感覚で、作る過程を楽しむ若い世代が増えた」と星野さん。「手前みそ」というように、同じ材料で同じように作っても保存環境で風味が変わるため、一緒に仕込んだメンバーが後でみそを持ち寄って食べ比べることもあるといいます。

 「無印良品」を展開する良品計画(東京)は、毎日のごはんに役に立つという視点でぬか床に注目。18年3月に「発酵ぬかどこ1kg」を発売しました。SNSで話題になり、予想を超えるヒット商品に。増産し、当初の26倍の数量を販売する。天然由来の抗菌性の強い乳酸菌を使い、週1回程度かき混ぜればよいという気軽さも受けています。

 「はじめる、続ける。 ぬか漬けの基本」(グラフィック社)の著書がある山田奈美さん(50)は「健康や食の安全への関心に加えて、発酵食品の食文化も注目されている」と言います。みそなら、みそ汁のほかに肉や魚をみそ漬けに、ぬか漬けなら料理で余った野菜や大根の皮なども漬けられ、ゴミを減らせる。「菌の力で保存ができてうま味が増す。暮らしの知恵を自分で実践することも、喜びにつながっているのでは」と話しています。(才本淳子)

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