山口啓太
拡大する卒業式には、野球部エースの同級生が由惟さんの遺影を手に持ち参加した=2020年3月11日、八潮市南川崎、山口啓太撮影
教室は、ちょっとした興奮に包まれていた。担任に名前を呼ばれた生徒が机の間を進む。仲間から冗談交じりの合いの手が飛ぶ中、照れ笑いを浮かべたり歓声をあげたりして、一人、また一人と卒業証書を手にしていく。
旅立ちの光景を、一番うしろの席で見ている女性がいた。児玉千穂さん(46)。灰色のジャケットと黒のスカートは、自分なりの「制服」のつもりだった。
2年半前。次女の由惟(ゆい)さんはいつものように自転車で朝練に向かった。埼玉県立八潮南高校の野球部マネジャー。1時間くらいたった頃、家の電話が鳴った。「娘さんが事故に遭いました」。
拡大する児玉由惟さん
トラックにはねられたのだという。案内された病院の救急室で、横たわる顔に手を伸ばした。冷たかった。16歳だった。
命日に花を供えに来てくれた同級生、気にかけてくれた野球部の副主将、同期の元マネジャー……。みな、担任に言葉をかけられ、証書を受け取っていく。由惟さんの机には、花と写真が供えられていた。
あの事故さえなければ――。深…
この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料会員記事です。
残り:658文字/全文:1074文字
【1/25まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら
速報・新着ニュース
あわせて読みたい
PR注目情報
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞社会部