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 東北に生まれ、膨大な作品群を遺(のこ)した作家井上ひさしさんが亡くなって、9日で10年がたつ。私たちは、私たちの社会は、彼の言葉をどれだけ受け継いでこられただろうか。仙台一高で青春の同じ空気を吸い、終生の友だった憲法学者の樋口陽一さん(85)が、朝日新聞宮城版に文章を寄せた。

 「人間を・また人間として、辱(はず)かしめ・辱かしめられてはならぬとする気質」

 井上ひさしが世を去って間を置かず公刊された最後の大作『一週間』をとりあげて、評者大江健三郎は、小説の主人公――作者自身の父上の名を与えられているのだが――の造形に託された倫理性を、深いところで、また見事な表現でこう受けとめた。

 『一週間』の作者が他界して一一カ月の後、「3・11」の天災と人災が、彼の「人間」そのものを育んだ東北を襲う。「みんなが豊かで幸せになる」という高度経済成長の夢が一転し、「無縁社会」とまで言われるようになった頃だった。しかし、無惨な破壊の衝撃の中で人びとは、絶望を越えた明日を求め、連帯の思いをこめた「人間」を再発見したのではなかったか。少なくとも私には、そう思える実感があった。

 そうした「人間」のそれぞれが…

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