コロナ「自分はうつらない」は幻想 外出自粛求めるなら

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岡崎明子
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 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないことから、政府は近く、緊急事態宣言に踏み切る方針です。これまでも政府や首長らがさまざまな「要請」を出してきました。オーバーシュートを防ぐための、国や自治体のメッセージの出し方は適切なのでしょうか。それを受け止める私たちは、どう行動すべきなのでしょうか。「人は必ずしも合理的な行動を取らない」を前提に考える行動経済学を専門とし、公衆衛生にも詳しい大阪大学の平井啓准教授に話を聞きました。

 ――安倍首相や知事らが相次いで不要不急の外出自粛を求めています。国民への伝え方をどう評価していますか。

 「お願いベースでこんなにも行動が変わるということは、ほかの国ではあり得ないと思います。ただ、『密閉』『密集』『密接』という3密を避けて欲しい、というお願いの仕方では限界があります。何を避ければいいのか、反対にどんな行動ならいいのか、もっと具体的な例を示さないと、一般の人にはわかりません。また他人の行動を参考にして自らの行動を決める『規範性』の高い日本では、何となく周りの行動を規範としています。みんなが外出を自粛していればそうしますが、時間がたって周囲の人が出歩くようになると『ほかの人も外出しているから』となってしまいがちです」

増える若者の感染者

 ――若者の感染者数が増えています。ただ先週末は、繁華街を歩く若者もだいぶ減ったようです。

 「多くの若者は自粛要請を守っているとおもいます。しかし意思決定する際には、未来の大きな利益の可能性より、目の前にある小さな利益を重視する『現在バイアス』がはたらきます。若者は、このバイアスが働きやすい傾向はあるとおもいます。通常では『ウイルスに感染したら大変だ』という未来の見通しが頭にあれば、予防的な行動が取れるはずです。しかし、例えば大学4年生が『卒業旅行には今しかいけない』『キャンセル料がもったいない』となれば、たとえリスクを理解していても旅行に行ってしまうということがあります。若い人は、過去に大きな病気をしたことがないという『経験値』の少なさにより、年を重ねた人と比べると将来のリスク認識を過小評価してしまい、より目の前の利益を重視しがちだと言えます。若者に限らず、人はバイアスから逃げられないということを自覚する必要があります」

 ――報道のあり方にも課題はありますか?

 「とくにテレビのワイドショーの伝え方は恐怖をあおる面があり、必要以上に怖がる人を増やしていると感じます。必要以上に恐怖を感じて極端な予防行動に走る人と、『自分は感染しない』と考える人の二極化につながっていると考えています。極端な予防行動を取る人は、あらゆる外出や他人との接触をひかえたり、さらに行き過ぎると治療が終わった感染者や医療従事者らを差別したり、大量のマスクを買い込んだりしているのではないでしょうか。必要以上に恐怖を感じる情報に接する機会を増やさず冷静に判断できるよう、普段から入ってくる情報を調整する心構えが必要だと思います」

 「こうした事態を避けるには、具体的な数字を出すことも一案です。たとえば、米国では『指針に従っても10万~24万人死ぬ、対策を取らなければ最大で220万人死ぬ』といった具合に、かなり踏み込んだ数字を発表しています。日本では『数字が独り歩きするのは怖い』と考えているのか、なかなか出てきません」

 ――数字を出せば、より自粛効果はあるのでしょうか。

 「行動経済学に『フレーミング効果』という言葉があります。メッセージの出し方の違いで、人々の行動が変わることを示しています。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏による『アジア病』という有名な質問があります。『アメリカはいま、アジア病という感染症の大流行に備えています。この流行の死者数は、放置すれば600人に達します』として、二つの選択肢から対策を選ばせるのです。Aは『200人が助かる』、Bは『3分の1の確率で600人が助かるが、3分の2の確率で1人も助からない』とします。あなたなら、どちらを選びますか?」

 ――Aでしょうか…

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岡崎明子
岡崎明子(おかざき・あきこ)朝日新聞医療サイト「アピタル」編集長
科学医療部記者。広島支局をふり出しに、科学医療部で長く勤務。おもに医療、医学分野を担当し、生殖医療、がんなどを取材。特別報道部時代は、加計学園獣医学部新設問題の取材で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞。オピニオン編集部デスクを経て、2020年4月からアピタル編集長。