雪が積もるアフガニスタンの首都カブール郊外。飲食店を営むサミウラ・マランさん(46)の家を訪ねた。
多くの家がそうであるように、サミウラさんの家も安全のため、高い塀で囲われていた。電話で到着を知らせると、門が開いた。「お待たせしました。道でお迎えできず、申し訳ない」。外国人を家に招き入れることはこの国ではリスクだ。武装勢力タリバーンが国土の約半分を影響下に置き、市民の動向を見張っている。
居間では生後間もない三男が、かごに揺られていた。抱き上げると目をぱちぱちさせ、こちらを見つめた。目の周りには魔よけのアイラインが塗られていた。あいさつ代わりに小さなオナラを放ち、場を和ませた。
出生届の氏名欄には「ナカムラ・ムスリムヤール」。東部で昨年12月に何者かに殺害されたNGO「ペシャワール会」の現地代表、中村哲医師(当時73)にちなんで名付けた。東部育ちのサミウラさんは、中村医師の灌漑(かんがい)事業で実家の周りの砂漠が緑の大地に変わるのを見てきた。「干ばつ下の村を助けてくれたのは、外国の援軍でも武器でもなく、たった1人のナカムラだった」
中村の漢字の意味をネットで…