緊急事態宣言がついに出た。飲食店や小売店などで休業が広がり、働きたくても働けない人が増えている。収入が大きく減ったり仕事を失ったりする人も多くなりそうだ。困ったときにどうすればいいのか。働き手の主な支援制度をまとめた。
国際労働機関(ILO)は、今回の世界的な雇用悪化は第2次大戦後では最大規模になるとみている。厚生労働省は雇い止めや解雇が見込まれる人数を4月6日時点で1473人分把握している。これは氷山の一角で、雇用情勢はさらに厳しくなりそうだ。
休業手当は会社の義務
店や事務所の業務が止まり、会社から休むよう指示されている人も多いだろう。会社の自主的な判断や責任で従業員を休ませる場合、労働基準法に基づいて会社は休業手当を出す。正規、非正規といった雇用形態には関係なく、その人の直近3カ月間の平均賃金をもとに、6割以上を支払わなければならない。
緊急事態宣言で、社員を休ませるのはやむを得ないことだとして、会社が休業手当の支払いを拒むことも考えられる。国は「企業が自粛に応じても支払い義務が一律になくなるものではない」としているが、基準はあいまいだ。疑問があれば各地の労働基準監督署に相談しよう。
国は休業手当をきちんと払えるように、企業の支援策も用意している。雇用調整助成金の制度を一時的に拡充。大企業は4分の3、中小企業は10分の9の助成を受けられる。売り上げが5%以上減っても1人も解雇していないことなどが条件で、細かい内容は厚労省が近く示す。
支援金はフリーランスも対象
会社によっては自粛期間中に有給休暇(有休)を消化するよう求めてくるかもしれない。有休は働く人が自主的に取るもので、会社側が期日などを指定して無理やり取らせるのは違法だ。
小学校休業等対応助成金・支援金は、小学校などの臨時休校が長引き、子どもの世話で休む人のために設けられた。有休とは別に特別休暇を与えた会社に対し、1人あたり1日8330円を上限に助成する。
フリーランス(個人事業主)の働き手も対象だ。一定条件を満たすと、働けなかった1日あたり一律4100円を支援する。仕事内容や報酬などを確認できる資料が必要。
助成・支援金の申請は6月末まで。臨時休校の対象は小学校や幼稚園、保育所などで中学校、高校は含まない。
子どもに感染の恐れがあったり、重症化が心配される基礎疾患があったりして学校側から休むことへの了承を得ている保護者にも適用される。
「性風俗業」や「接待を伴う飲食業」で働く人は対象外だったが、国は要件を緩める方針だ。
職場感染は労災認定も
感染して就業制限の対象になった場合は、休業手当の対象にはならないとされる。そこで申請を検討すべきなのが労災保険の休業補償。業務中や通勤時に感染すれば、適用される可能性がある。おおむね直前3カ月間の平均賃金の8割が補償される。
業務外で感染すると労災は適用されないが、健康保険の傷病手当金を受け取れる可能性がある。おおむね平均賃金の3分の2が補償される。フリーランスらが加入する国民健康保険でも、市区町村によっては傷病手当金が出るところもある。
解雇されたら失業保険
解雇されたら雇用保険の失業給付がある。給付額は年齢や勤続年数などで異なり、離職前の賃金の45~80%程度が支払われる。
会社が倒産してまだ支払ってもらっていない賃金がある場合は、未払賃金立替払制度を使う手がある。上限はあるが、一定期間の未払い賃金と退職手当の8割を立て替えてもらえる。
解雇などで家賃の支払いができなくなるケースもある。住居確保給付金は職を探す間(原則3カ月)、支援を受けられる。自治体によって給付額や受けられる条件は異なる。
当面の生活費に困ったら、生活福祉資金貸付制度で数十万円程度を借りることもできる。各地の社会福祉協議会が窓口で、新型コロナウイルス対策の特例措置なら無利子で保証人もいらない。
現金30万円の条件
国の緊急経済対策の目玉が、減収世帯への30万円の給付だ。条件のハードルは高く、期待していたのにもらえない人も多そうだ。
受け取るには2~6月の任意の月の収入が減り、次の条件に当てはまる必要がある。年間ベースでみると住民税非課税になる世帯。もしくは、収入が半減し年間ベースで住民税非課税の水準の2倍以下になる世帯。住民税非課税とは、単身世帯で年収100万円以下ぐらいの水準だ。国は対象は約1300万世帯で全体の約5分の1にあたるとするが、収入減の条件が厳しすぎるといった意見もある。
売り上げが半減し事業が続けられないフリーランスらに、最大100万円を給付する制度も設けられた。
説明してきたもののほかにも、各企業や労働組合、自治体などに働き手を支援する制度がある。情報を集めつつ、困ったら早めに企業や自治体などの窓口に相談することが大切だ。
生活保護も権利
こうした支援制度を使っても、収入減で生活できなくなる恐れは十分ある。そんなときは無理せずに、生活保護を申請する。
生活保護制度は最後のセーフティーネット(安全網)で国民の当然の権利だ。各自治体に申請するが、窓口で受け付けを渋られることも。困ったら生活困難者を支援する団体や弁護士らに相談してみよう。
緊急事態宣言は5月6日までの予定だが、そこで感染拡大が収束する保証はない。経済情勢の悪化が長引けば、希望退職募集なども相次ぐ。支援制度をうまく使って、暮らしを守ることが求められそうだ。(志村亮、滝沢卓)
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