第1回60年前のダム計画、今も粘る13世帯 12億円を拒否
原口晋也
岐路に立つ長崎・石木ダム①
長崎県川棚(かわたな)町は、長崎空港から大村湾沿いに車で30分ほど北上した位置にある。川棚川河口部のにぎやかな中心部を経て、上流方向にさらに7~8分走ると、のどかな田園風景の中に巨大な看板群が目に飛び込んでくる。
「石木(いしき)ダム建設絶対反対」
「水の底より 今の故郷」
この地にダム計画が持ち上がったのは1962年のことだ。その後多くの住民が故郷を去ったが、川原(こうばる)集落には今も13世帯、五十数人が立ち退きを拒んで暮らす。米や野菜を作り、山菜を採り、時にイノシシを狩る。30~50代は町内外に職を得ながら農業もする。
石木ダム事業は、川棚川の支流の石木川を、高さ55・4メートル、幅234メートルのコンクリート製の堰堤(えんてい)でせき止め、総貯水量548万トンのダムを築く計画だ。隣の佐世保市への水道水供給と、町を洪水から守るために本流の水量を調節する治水を目的とする。佐世保への導水事業なども含め、最新の見積もりで総額600億円を超す。
13世帯の粘りにしびれを切…