人々の不安を和らげるはずの礼拝の場が、新型コロナウイルスの感染源となる皮肉な事態が世界各地で起きている。礼拝中に集団で罹患(りかん)したり、巡礼者が国境を越えてウイルスを運んだりする感染の連鎖に、各国政府や宗教界は苦慮している。
厳格なイスラム教国のパキスタンでは感染者が7日時点で4千人を超え、1週間で倍増した。医療態勢が脆弱(ぜいじゃく)で感染の全容は分かっていない。墓地を増設し、地中深くに遺体を埋めている。
信徒が重視するのが、毎週金曜に礼拝所(モスク)である集団礼拝だ。大勢が集まるため濃厚接触は避けられない。
南部シンド州は3日に外出禁止令を出し、モスクでの金曜礼拝を禁じた。だが一部が礼拝を強行。止めに入った警察を信徒数十人が袋だたきにする騒ぎが起きた。宗教への介入は暴動に発展しかねず、中央政府は宗教施設の閉鎖に踏み切れないでいる。
保守的な地域では特にモスクの影響力が強い。北西部の教員ハフィズラ・カーンさん(42)は「モスクでの礼拝は難局を乗り切るのに欠かせない。あとは天命を待つだけだ。感染も生死も神の意向で決まるのだから」と語る。
同国で最初の集団感染は、イランの聖地帰りのシーア派巡礼者たち。隔離施設の周囲では、抗議デモや放火が起きた。多数派スンニ派との宗派対立につながらないか懸念が高まる。
隣国アフガニスタンの感染者…

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