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 新型コロナウイルスの感染拡大による学校の休校が続く中、緊急事態宣言を受けた東京都の休業要請先に学習塾も入った。だが、100平方メートル以下の場合は「営業可」。首都圏の大手塾が軒並み休講となり、需要が高まるなか、小規模の塾は授業を続けるかどうか揺れている。

 「宣言が出るなら、協力しなければ」。都内のある個人塾は、小池百合子都知事が「学習塾」を休業要請案に入れた6日から、休講を決めた。

 だが、10日の都の発表では、床面積の合計が1千平方メートルを超える施設は「基本的に休止を要請」し、1千平方メートル以下の施設は休業協力を依頼する。一方、100平方メートル以下は、適切な感染予防策を施したうえで営業を認める、とした。

 この個人塾の教室は60平方メートル程度で、継続可能だ。生徒は近所の小中学生約50人。席の間隔を空け、少人数に分けることもできる。経営者(74)は「補償対象にならないなら、経営的には再開した方がいいかもしれない。ただ、もう(休講と)伝えてしまったし、感染者を出したらうちのような小さな塾はつぶれる。悩ましい」。

 30平方メートル程度の都内の別の小さな塾も、休業要請に学習塾が入ると聞き、9日から教室を閉めた。保護者アンケートでは、1人を除いて全員が「授業を続けて欲しい」と回答していたため、LINEなどを使って遠隔で生徒の質問に答え、添削指導もしている。30代の塾長は「学校も塾もなくなれば、勉強が苦手な子は本当に何もやらなくなる。放置できない。でも今さら再開も難しい。しばらくは休むとして月謝はどうするか」と話す。

 各地に教室がある個別指導塾の30代の男性職員は、「うちは大きな教室での授業はやめたが、100平方メートルを少し超える教室も含め、狭い教室は開講を続けている」と明かす。「生徒や社員、その家族の命や健康と社会責任をどう考えているのか。非常識だ」

 保護者の中には、学力低下の不安を感じる人も少なくない。

 新中3の息子がいる都内の母親(48)は、学校も塾も休みになり、家庭教師を頼もうと複数の派遣会社に問い合わせた。だが、「大変多くの問い合わせをいただいていて、すぐには対応できない」と言われた。「こんな状況が続けば、確実に学力も落ち、受験にも影響する。どうすればいいのか」と途方に暮れる。(宮坂麻子、伊藤和行)

 一方、大手塾や中規模塾の多くは対面授業をやめ、オンライン授業に切り替えるところも。

 中学受験から大学受験まで対応する早稲田アカデミーは8日から大学受験向けに、13日から中高受験向けにオンライン上での「双方向Web授業」を始める。生徒と講師が画面上で互いの顔を見ながら、通常のように対話する授業だ。3月の一斉休校の際、教室を閉めて授業動画を配信したが、学力維持には双方向の授業が欠かせないと判断。iPad約2千台を確保し、3月初めから準備を進めてきたという。

 担当者は「感染予防は大切。でも入試は待ってくれない。休校延長や再休校の可能性もあるので、遠隔でも質のより高い授業を届ける改革を続けるしかない」と話す。

 大学受験の東進ハイスクールは、8日から感染拡大地域の教室で授業をとりやめた一方、11日から5月末まで、受講生以外も含め全国の高校生向けに無料の「自宅オンライン講習」を始めた。運営するナガセ広報部は「意欲があっても、学校や塾に行けない高校生が全国で出てきた。応援したい」としている。

 大手予備校の河合塾、駿台予備学校も、塾生は収録した授業映像をウェブ上で見られるようにする。

 神奈川県内の男子児童が通う中学受験向けの中規模塾では、緊急事態宣言が出た数日後からチャットアプリの活用を始めた。ユーチューブで配信された動画授業を見た後、課題に取り組む。復習テストの答案用紙をスマートフォンで撮影してアプリで送ると、講師から返事が来る。匿名で質問もできる。

 男子児童は言う。「やっぱり人がいないと寂しいけど、動画で授業を見るのは楽しい。先生も応援してくれるから励みになる」(増谷文生、西村悠輔)