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 昨秋、山形市で国内初上映された現代美術家・大浦信行さんの新作映画「遠近を抱えた女」が動画配信サイトで公開されている。昨年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で、大浦さんが出品した別の映像作品への抗議が相次いだこともあり、国内では上映機会に恵まれないが、作品のプロデューサーは「特定のイデオロギーに従属する作品ではない。純粋な映画として評価してほしい」と願う。

 公開は11日から。映画は2018年の製作で、大浦さんの長編5作目。全身にタトゥーを入れ、稽古に励む舞台女優のあべあゆみさんの日常を追ったドキュメンタリーに、フィクションとしての売春場面などが差し込まれる。哲学的で難解ながら笑いの要素も含む、現実と虚構が入り交じった1時間38分の作品だ。

 大浦さんはあいちトリエンナーレの企画展に、別の映像作品を出品。新作映画にも含まれる、昭和天皇の肖像などをコラージュした版画が燃やされるシーンに対して抗議が相次いだ。ほかの作家の作品への抗議も後を絶たず、企画展は一時中止される騒ぎに。大浦さんは「自己の内面を作品化したもので、批判や冒瀆(ぼうとく)といった政治的意図はない。天皇を表現することへのタブーが、いまだ根強いことを痛感した」などと話していた。

 新作映画は昨年10月、山形国際ドキュメンタリー映画祭の関連イベントで国内初上映された。この時は抗議もなく、今年2月にベルギーで開かれた国際映画祭でも、3千本以上の応募作からオープニング作品の一つに選ばれ、上映されたという。しかし、国内では配給会社や映画館から「クレームが来た時に対応できない」などと上映を断られていた。

 撮影とプロデュースを担った辻智彦さんは「笑いや驚き、時に艶っぽさも振り撒く映画的魅力に満ちた作品です」。その上で「映画を見た上で議論が生まれればいい。観客から見る機会そのものを奪ってはならない」とサイトでの公開に踏み切った理由を語る。

 動画配信サイト「vimeo」(https://vimeo.com/ondemand/whp別ウインドウで開きます)で見ることができる。料金は1千円で、5月8日まで。18歳未満は視聴不可。売り上げの半分は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で収入が減っている全国のミニシアターに寄付するという。(西田理人)