青木美希
3月4日朝、私のスマートフォンに着信履歴があるのに気がついた。午前4時すぎ、福島県南相馬市の庄司範英(のりひで)さん(55)からかかってきていた。留守電には呼吸の音だけが入っている。
午前9時、10時、11時……。かけ直してもコール音が鳴るだけだ。胸騒ぎがした。2カ月前にも3日間つながらなかったことがあった。このときは庄司さんから「相談電話で『死にたい』と話したら、強制入院させられて電話できなかったんですよ」と聞いた。
庄司さんは、東京電力福島第一原発事故で家族と共に新潟県に避難していた。政府と福島県が2017年に住宅提供を打ち切ったため、庄司さんだけが戻って働かざるを得なくなった。庄司さんの勤務初日の未明、長男で中学3年の黎央(れお)さん(当時14)は自ら命を絶った。以来、庄司さんは後を追おうと自殺未遂を繰り返し、6回ほど保護されている。
拡大する黎央さんの思い出を語る庄司範英さん=2020年2月16日午後5時30分、福島県南相馬市、青木美希撮影
まさか……。
電話を繰り返し、4日後によう…
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