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 高校生が競う全国大会は高校野球にちなんで「○○甲子園」と呼ばれることが多いが、何をするのかイメージしにくい「缶サット甲子園」という大会がある。事務局の中心を担う和歌山大の秋山演亮(ひろあき)教授は「宇宙開発を担う人材を育てる」とスケールの大きな狙いを語るが、そもそも缶サットとは何なのか?

 缶サットは「空き缶サテライト」の略で、容量350ミリリットルの空き缶にカメラや測定機器などを搭載し、小型の衛星(サテライト)とみなしたもの。缶サット甲子園では高校生3、4人のチームが、缶サットを積んだロケットの打ち上げ、上空での缶サット放出、観測などのミッション、着地した機器の回収までの一連の技術やアイデアを競う。

 ミッションは地形の撮影や高度の測定など、各チームが目的や観測内容を自ら設定する。缶サットをロケットで高度数百メートルの上空に運び、放出、着地まで10数秒。各チームはこのわずかな時間に青春をかけ、必要な装置を自作し、缶に詰め込む。技術だけでなく、プレゼンテーションなどを総合的に評価して優勝チームが決まる。2008年の第1回大会から300を超えるチームの千人以上が参加した。

 研究や大学生の教育が本分の秋山さんが、なぜ高校生の大会を支えるのか。これまで、月探査機「かぐや」や小惑星探査機「はやぶさ」に関わってきたが、その後の国のプロジェクトにスピード感がなく危機感を抱いていた。「時代が変わり、民間による宇宙開発を見すえて人を育てる必要がある」

 チームでプロジェクトを動かす体験こそが缶サット甲子園の狙いだ。「失敗させることも目的の一つ。失敗を知らないまま、将来大きな宇宙開発プロジェクトに関わる方が怖いから」と笑う。参加を機に宇宙工学を志す学生や、関わった大学生が宇宙ベンチャーを起業した例も出てきた。宇宙開発を担う若者は着実に増えている。(野中良祐