「おやじ、マスクあるけど…」息子と信じたら詐欺被害に
新型コロナウイルスの感染拡大に乗じ、詐欺グループが暗躍し始めた。外出自粛要請で家にこもる高齢者らを狙い、健康や生活への不安に、言葉巧みに付け入ろうとする。不審な電話にはこれまで以上に注意して、と警察は呼びかけている。(国方萌乃、茶井祐輝)
だまし取られた300万円
「おやじ、マスクあるけどどうする」。愛知県警によると、名古屋市の90代男性宅に3月23日、そんな電話がかかった。健康を気遣う言葉に、息子だと信じ込んだ男性は「仮想通貨でもうかったので、税金の処理に金がいる」と言われ、自宅を訪ねてきた弁護士役の男に300万円を渡してしまったという。
大阪府警によると、府内の80代男性も4月上旬、息子を名乗る男に借金の肩代わりを頼まれ、800万円をだまし取られた。男性はお金を用意する際、銀行の窓口で「コロナの関係で手元に資金がいる」と説明していた。行員のチェックをすり抜けるための詐欺グループの指示だった。
「新型コロナウイルスの騒ぎでお金に困っている。息子さんに貸した100万円を今すぐ返してもらいたい」。国民生活センターによると、東海地方の80代女性宅には、息子の上司をかたる男から、そんな電話があった。上司の親族を名乗る男に約100万円を手渡したという。
緊急事態宣言 経験なく詐欺気づけず
不安をあおる手口も目立つ。北関東の70代女性宅には「ウイルスが水道水に混ざっている。濾過(ろか)するのでお宅の場所を教えて」と威圧的な口調の電話があったという。
「詐欺グループは常に時事ネタを使う。漠然とした不安を与え、論理的な思考を失わせる」。詐欺の手口に詳しい立正大学の西田公昭教授(社会心理学)はそう指摘する。新型コロナの場合、「自分も感染するかも」という危機感が不安に拍車をかける。「緊急事態宣言は誰も経験したことがない。多少のことでは詐欺と気づけない恐れがある」と警鐘を鳴らす。
「70歳以上に3万円」期待に惑わされ
西田教授によると、「不安」だけでなく、「期待」も人を惑わせる要素だ。
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