2016年の熊本地震で甚大な被害があった熊本県南阿蘇村に、育児問題を抱えた母子が一時的に身を寄せられる寮ができた。かつて東海大農学部のキャンパスがあり、「学生村」と呼ばれた地区。その特長を生かし、母子は周囲の人たちに見守られ生活している。
南阿蘇村黒川地区の山奥にある、2階建ての木造住宅。ある女性は昨年、夫からの精神的なハラスメントなどが原因で、子どもを連れて寮にやってきた。最初は誰も信じられず、子どもは不登校の状態だった。
近所の人が食材をくれたり、子の面倒をみてくれたり。女性は徐々に村民と交流するようになり、子どもは通学を始めた。母子は寮で数カ月過ごした後、村の空き家を借りた。今は農家の手伝いをしながら、自立をめざしている。
寮は、三重県鈴鹿市のNPO法人「マザーズライフサポーター」が昨年6月に開設した。これまで6人の母親とその子どもが、1週間~3カ月ほど過ごした。
理事長の伊藤理恵さん(35)によると、全国で新型コロナ対策の一斉休校が始まり、同NPOには「夫が在宅勤務になり、家族に暴力を振るうようになった」という相談も来る。伊藤さんは「感染拡大が落ち着けば、ここの寮に来て癒やされてほしい」と話している。
なぜ黒川地区なのか。
同NPOは全国で託児付きの仮眠室、育児情報誌の発行、仕事紹介などのサービスを提供し、延べ年2万人の母親が利用している。
伊藤さんは昨年、「人手不足の農家と経済的な自立をめざす母親をつなぐ拠点をつくりたい」と考え、南阿蘇村の山、水、農業の魅力に目をつけた。村に足を運ぶうち、「学生村」という言葉を耳にする。
熊本地震が起きるまで地区には東海大農学部阿蘇キャンパスがあり、周辺は数十棟のアパートや下宿に学生約800人が暮らしていた。大家の「おじちゃん」「おばちゃん」が、普段から学生の衣食住を世話していた。
4年前の地震で地区の学生3人が犠牲になり、キャンパスは熊本市に移った。下宿の元大家の女性らは、伊藤さんに「当たり前の生活が当たり前じゃなくなった」「また子どもたちにご飯をつくってあげたい」と涙ながらに語った。
伊藤さんは「ここは、学生が村…
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