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医の手帳・肺炎

 昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID―19)で「肺炎」という言葉をよく聞くようになりました。肺炎とは、肺が炎症を起こした状態で、原因は病原菌・免疫反応・アレルギーなど多岐にわたります。一般には感染症としての肺炎をさすことが多いです。

 感染症としての肺炎は細菌性とウイルス性に分かれます。通常は細菌性の頻度が高く、死亡者数も多いです。肺炎で亡くなる人は年々増え、2011年には日本人の死因の3位になりました。その後、老衰などに抜かれ、18年は5位になっています。

 重要なのは、のみ込み違いで起こる「誤嚥(ごえん)性肺炎」です。食べ物と空気の通り道は、口からのど(喉頭(こうとう))までは一緒です。喉頭で空気は肺へ、食べ物などは食道から胃へ分けるのが嚥下(えんげ)です。しかし、嚥下がうまくいかず、空気しか入らないはずの肺に食べ物や唾液(だえき)が入り、肺炎を起こすのが誤嚥性肺炎です。人間の口には、食べかすなどの栄養があり、菌の繁殖には適温な状態です。菌を食べ物や唾液とともに肺に誤嚥してしまうために起こります。

 誤嚥は、脳梗塞(こうそく)などによるまひ、認知症の進行、口腔(こうくう)内腫瘍(しゅよう)などのほか、加齢で体力が低下することでも起こります。我々の調査では、誤嚥性肺炎で入院すると、約半数で生活機能が低下することがわかりました。そして、生活機能や体力が低下すると、肺炎を起こしやすくなる悪循環に陥ります。治療には抗菌薬を使いますが、治っても繰り返し肺炎を起こすようになります。体力保持や口腔(こうくう)内を清潔に保つなど複合的なケアで予防・治療することが大切です。

 COVID―19もウイルス性肺炎ですが、よく見られるのは細菌性肺炎です。ワクチンのある肺炎球菌のほか、インフルエンザ菌などが細菌性肺炎の原因になります。

 細菌性肺炎には抗菌薬を使います。菌によって薬は異なるので、病原体の特定が重要です。ウイルス性では、インフルエンザなど一部を除き有効な薬はなく、解熱剤などで経過を見ます。COVID―19も、様々な薬が試されています。

 細菌性感染症は、感染した臓器のみ症状が出ます。肺炎なら、熱や筋肉痛・頭痛などの全身症状と、せきやたんが中心で、鼻水やのどの痛みはほとんどありません。一方、ウイルス性上気道炎(かぜ)は、鼻水・のどの痛み・せきやたん全ての症状が見られることが多いです。同時に発症するとは限りませんが、診断の参考になります。

 ただ、今回のCOVID―19は、発熱やせきの報告は多い一方、鼻水やのどの痛みなどの症状は多くなく、味覚障害なども話題になっており、まだまだ分からないことが多いです。感染経路は、接触・飛沫(ひまつ)感染が基本と考えられ、予防法はインフルエンザなどと同様に、マスク・うがい・手洗い、不要な接触予防です。すでに感染経路が追えない患者も増加していますので、不要な外出は避けるなどして、予防することがとても大切だと考えます。(新潟大学新潟地域医療学講座 小泉健特任助教<呼吸器・感染症内科>)