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一冊入魂「宮本武蔵」(吉川英治著)

 帝京(東京)の監督になって間もない20代前半だったかな。夢中になって読み込んだのが、剣豪の成長を書いた作品である吉川英治さんの「宮本武蔵」です。この本を読むきっかけを与えてくれた方がいました。

 当時、原貢さん率いる東海大相模(神奈川)と練習試合をしました。ぼこぼこにされましてね。試合が終わって、「試合に勝ちたいか」と問われたんです。私は「勝ちたいです」と答えました。すると、「勝つには日本の野球を知ることだ。武道の本を読みなさい」と。そして、出会ったのが、この1冊です。

 姫路城を出るときに、「まだ遅くない、人間をつくるには」という場面が好きでね。ゼロからの出発をした人だと思って、自分と重なる部分があった。大学卒業後、帝京の監督に就任したが最終的に部員として残ったのは4人だけ。まさにいばらの道でした。

 物語が進むにつれて、武蔵は様々な人と出会って成長する。つながりは大事です。いつか芽が出ます。

 球児にとって今は我慢のとき。新たなスタートを切れる日は、きっと来ます。(聞き手・辻隆徳)

 〈まえだ・みつお〉 千葉県出身。1972年から帝京(東京)の監督。2度の全国制覇など甲子園で春夏通算51勝。現役の教え子に山崎康晃(DeNA)や原口文仁(阪神)ら。70歳。

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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で高校球児の多くが、満足に練習できないでいる。体を動かせないときは、頭を鍛えよう。指導者たちが、魂を込めて君たちに贈る一冊。『一冊入魂』