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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、鍵となるのが感染経路の特定だ。オーストラリアでは、その「追跡チーム」が活躍している。国内の感染者約6500人のうち、経路が不明な人はわずか1割。徹底した電話作戦で、感染が広がる心配をつぶそうとしている。

 豪州で人口が最大の州であるニューサウスウェールズ州の保健省は3月初め、「新型コロナウイルス接触追跡チーム」を立ち上げた。シドニー北部のビルにある、企業のオフィスのような場所がチームの拠点だ。

 「もしもし、州保健省です」。メンバーが電話をするのは、感染が確認された人が濃厚接触をした可能性がある人たちだ。保健省の担当者が事前に感染者に対して、誰に会ったか、どの店に行ったかなど、症状が出る前後の行動を詳しく聞き取る。感染者の家族や友人、同僚らの場合が多いが、乗った飛行機で近くに座った乗客たちのような場合もある。

 チームは連絡先がわかったその一人一人に、事情を説明。州の公衆衛生法に基づいて「14日間、自主的に隔離を」と告げる。隔離期間中にはほぼ毎日、電話をして、体調に変化がないかを尋ねる。

 チームを率いるキャロリン・マリーさんは「これは、感染拡大を防ぐ戦略で鍵を握る部分の一つだ」と強調する。接触した人が感染していても、ほかの誰かにうつす可能性をなくせるからだ。

 チームの態勢は現在、州の別の部署や豪軍などからも応援要員を出してもらい、150人に広がった。電話の件数は1日に1300件になる。

 隔離中は、政府の外出規制の例外として認められている生活必需品の買い物にも行けない。発覚すると、罰金を科せられる場合もある。そのためチームは、一人暮らしの人向けの食料品や持病がある人の医薬品の手配、メンタルヘルスの電話相談の紹介もする。「大切なのは、隔離を求められる人たちに思いやりをもって接すること」(マリーさん)だという。

 人口が800万人の同州では15日までに15万件の検査をし、国内で最も多い約2897人の感染が確認された。追跡チームの努力もあって、感染経路が不明の人は全体の12%。ここ数日は新規の感染者数が10人前後にとどまる。

 豪州全体では16日までに38万件の検査をし、6468人の確認が確認された。水際作戦や外出規制が効果を上げ、3月下旬には日々の感染者の新たな確認数が400人前後だったが、16日は21人に激減した。(シドニー=小暮哲夫)