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 ぼくの記憶が、とつぜん、戻った。

 目の前のカウンターには、すっかりお爺(じい)ちゃんになったタモっちゃんがいて、口の中には、バター入り牛鍋の味が広がっている。この味をお夕ちゃんに食べさせたくて、上海の自宅で再現してみたこと、うまく作れなかったのに、妻は「あらおいしいわ」と喜んで食べてくれたことを、ぼくは思いだした。そんな妻の死に目に会おうとせず、自分が玄関先の庭石にぼんやり座っていた日のことも。ミンミンミンミンミン……あのときの、蟬(せみ)の声も……。

 もう七年も前に、お夕ちゃんは……。

 ぼくは保にモゴモゴと何か言い…

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