埼玉県内の団地に暮らす女性(86)は、夫と息子に先立たれた後に認知症と診断された。それから9年、介護サービスや地域の人の助けを借りて1人で暮らし続けている。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための緊急事態宣言が出た後も、支援する人たちは「いつもの暮らし」を支えようとしている。
「やっぱり家が一番いい」
「洗濯機を回してくれますか」。デイサービス(通所介護)から自宅に帰り、付き添った職員女性が声をかけると、女性は「は~い」と洗濯機の前に立った。服を入れ、電源を入れてしばらく戸惑っていたが、何度かボタンを押した後に洗濯機が動き出すと、ほっとした表情を浮かべた。その間に職員は夕食の準備をし、テーブルに並べる。女性が食前の薬をのみ、夕食を食べるのを見届けると、「また明日」と出ていった。
「やっぱり家が一番いい。好きなようにできる。困ったら(職員が)来てくれるから大丈夫」と女性は話す。
女性が利用する小規模多機能型居宅介護は、通所、訪問、ショートステイ(宿泊)を一つの事業所が担う。訪問でも通所でも接するのは顔なじみの職員だ。
夫や息子と暮らした団地の家…