第2回降らない雪、凍らない池 冬季五輪の競技者いなくなる?

有料記事

遠田寛生
[PR]

 拝啓、運動好きの方々へ。ある日、知人から言われます。「5年後、大好きなスポーツが同じように楽しめないかもしれない」。突然、そんな言葉を投げかけられたら、信じられますか。私は懐疑的でした。現場を見て回るまでは。伝統競技、人気競技でも、気候変動による異変はスポーツの現場でも起きていました。

南アルプスでも減り続ける

 あまりの大声に自分がビックリした。

「うわ。すごい、すごい」

 3月11日、仏南東部モンクラールのスキー場。午前8時過ぎに標高約2300メートルから見た南アルプスの山岳はうわさ以上の景色だった。澄んだ青色の空が迎えてくれて撮影には絶好の日和だ。自然にテンションが上がっていた。

 想像以上のリアクションだったのか、案内役のアラン・キェーヴさんはククッと笑っていた。気を取り直すと、右手で山を指した。「白と緑色の境目が見えるだろう。これが南アルプスの積雪の状況だ」

 スポーツ現場における気候変動の影響を取材したいと決めたとき、冬の山は避けられないテーマだった。温暖化で気温は上昇し、各地で降雪量が減っている。十何年も前からずっと議論されている問題だ。

 「気候連合」が2018年に公表した、英国のスポーツへの影響をまとめた報告書「ゲームチェンジャー」では、今世紀末までにアルプスの山岳地帯の気温は2~4度上昇し、標高1500メートル未満では降雪量が70~100%減少する見通しを出している。中でも大打撃を受けるのが、ドイツスイスなどの標高1千メートル未満のスキーリゾートだ。雪不足で、冬季シーズンは通常より開始が約1カ月遅くなり、最大で約3カ月早く閉まる可能性も伝えている。

 リゾートの経営難は、スキーやスノーボード人口に直結する。長期的な視点から見れば、競技の将来をも脅かす深刻な事態だ。

 実際の現場を確かめたい。ロ…

この記事は有料記事です。残り2287文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません