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 会社の工場で作られた部品が社員の家から家へと渡り歩き、加工と組み立てを経て完成品になり、最後に会社に戻ってくる。埼玉県川口市の木製玩具製造「こまむぐ」がコロナ禍の中、こんなテレワークに取り組んでいる。小さな木製玩具で自社で考案、製作する大手の下請けではなかったからなせるやり方だが、実は社内の絆がカギだという。

 同社の人気商品で、ドングリの人形が坂をゆらゆら揺れながら滑り落ちていく「どんぐりころころ」を例にすると、最初に社長の小松和人さん(39)が会社の工場で人形を削り出す。それを事情があって宮城県名取市にいる社員に送り、頭部分の色づけをする。次は山口県周南市にある粭島(すくもじま)にいる社員に転送。そこで水玉模様をつけて、今度は川口市の社員の家に送り、組み立てて仕上げる。最後に完成品となって会社に帰ってくる。

 打ち合わせなどはオンラインでパソコン画面上で行う。今年4月に入社した社員もいるので指導もオンラインで行う。社員は6人いるが、会社にいるのは小松さんだけという状態だ。

 4月6日から始めたが、2割ほど生産量は落ち込んではいる。しかし、小さな製品が多く一度にたくさん送れるため、輸送費はそれほど負担にならない。デパートなどでの売り上げは減ったが、自宅で家族で過ごす人が多いため、専門店での販売やネット通販などは落ち込んでいないという。

 通常は工場で行う作業を自宅に持ち込むため、研磨などの作業をやると木くずで部屋は真っ白に。塗装をすれば臭う。乾燥の場所も必要になる。新人への指導もオンラインでは難しい。

 だが、社員たちは一歩進めて前向きにとらえ、自宅での作業をSNSで発信して自社のファンづくりをしようと試みている。大量に手作業で加工する姿を早送りの映像にしたら面白いのではないか――など、色々な意見が出ているという。

 小松さんは「製造を止めたくないとの思いがみんなにあったからできた。上からの『頑張ろう』ではできなかった。小さな木製の玩具製造だからできたわけじゃない」と感謝している。(堤恭太)