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 虐待を受けている子たちへ。世の中には、あなたをなんとかして助けたいと思っている人がたくさんいます―。新型コロナウイルス感染拡大のなか、虐待を受けた当事者たちが、そんな発信をしています。言い出しづらく、気付いてもらいにくい虐待の構造を身をもって知るからこそ、休校などで家庭以外の逃げ場がなくなる子どもたちに、「勇気を持って相談して」と訴えます。

拡大する写真・図版ブローハン聡さんは「コロナのせいで虐待が起きているわけではなく、もともとあった問題が浮き彫りになってきた」と話す=「希望の狼煙」の動画から

 今回、「外出自粛で高まる家庭内の虐待リスク」(https://www.youtube.com/watch?v=EepOVhihcb0別ウインドウで開きます)と題する動画を制作したのは、映像作家や絵本作家として活動する西坂来人(らいと)さん(34)ら3人。「複数の場所に相談してみよう」などのメッセージと共に、虐待の相談窓口やDV被害者の支援センターなどの情報を紹介する内容だ。児童養護施設で育った経験があり、現在は支援活動などをしている西坂さんたちが、昨年9月に開設したユーチューブ内の番組「THREE FLAGS 希望の狼煙(のろし)」に、緊急企画として投稿した。

 メンバーの1人、モデルやタレントとしても活動するブローハン聡さん(28)は4歳から11歳までの7年間、義父から、母の見ていないところで身体的虐待を受け続けた。たたかれ、蹴られるのは日常茶飯事。包丁で脅されたり、冷たい水風呂に沈められたり。冬に裸で外に出されたこともあった。

 そんなブローハンさんにとって、学校にいる間は「家から離れられて、危険性が少ない時間」だった。今回、子どもは休校、親も外出自粛になると聞いたときは「ぞっとした」という。安全地帯がなくなり、「逃げ場のない密室空間で虐待が起きているのでは」という強い危惧から、動画を作った。

 最も訴えたいのは、絶望の淵にいる子どもたちに、「世界には、自分たちをなんとかしたいと思っている人がいる」ということだ。

ブローハンさんは壮絶な虐待を受けても、自分から周囲に助けを求めることはできなかった。義父が逆上し、「死のリスクを高める」と思えたし、さらに自分が逃げ出せば大好きな母に暴力の矛先が向くと考えた。また義父は、顔などを避けて暴力を振るったため、周囲の大人は気づかなかった。

 転機が訪れたのは11歳の時。義父がブローハンさんのお尻をあぶり、やけどをして椅子に座れないことから教師が虐待に気付いた。児童養護施設に入り、その後に支援団体などともつながりを持ったことで、初めて自分たちのために動いてくれる大人もいることを知った。現在はブローハンさんも、一般社団法人「青少年自助自立支援機構」の理事として施設出身の子どもたちの居場所作り事業や就労支援をしている。

 ただ、虐待を必死で隠している子にとっては、SOSを出すことがどんなに難しいかも身にしみている。

拡大する写真・図版西坂来人さんは「長期休校になると聞いて、すぐに虐待を受けている子どもたちのことを考えた」という=「希望の狼煙」の動画から

 ブローハンさんは、虐待を受けている子と支援者の間にいる、一般の大人たちの行動が大事だと言う。動画は、当事者の子どもたちだけでなく、虐待は自分の周囲では起こっていないと思っている人にこそぜひみてほしいと思っている。「虐待の背景や支援情報を知る人が増えて、その人たちが橋渡しをしてくれれば、子どもたちの人生が切り開けるチャンスがあるんじゃないかな」

 撮影や編集を担当した西坂さんも「暴力から逃れるための手段はあるので、身を守る行動を取って」と呼びかけた。

 西坂さんの父親は酒を飲むと暴れ、なたを振り回すなど母へのDVがひどかった。母が殺されるのでは、という不安を抱えながら暮らしていたこともあったという。さらに、仕事がうまくいかなくなるとDVはひどくなっていった。コロナ禍で経済が落ち込むことで、子どもがストレスのはけ口になることも危惧している。

 西坂さんは子どもたちに「子どもにも人権があることを伝えたい」という。親に暴力を振るわれるのはおかしいし、親が間違うこともある。「おかしなことをされているという違和感を信じて、勇気を持って相談してほしい」(山本奈朱香