アフリカ東部ケニアのスラム街に、日本人の支援で運営される学校「マゴソスクール」はある。様々な困難を抱えながら学ぶ子どもたちにとって、「希望の学校」だ。新型コロナウイルスの感染が世界中で広がるなか、この学校も休校を余儀なくされた。再開のめどは、まだたっていない。
朝と昼の給食が一番の楽しみ
真新しい高層ビルがそびえ立ち、交通渋滞が日常になったアフリカ東部ケニアの首都ナイロビ。その中心部からほど近い場所に、トタンと土壁でできた家屋が立ち並ぶアフリカ最大規模のスラム街、キベラスラムがある。
午前7時前、その一角に立つ学校「マゴソスクール」に、制服姿の子どもたちが次々に登校してきた。出迎えた教員にあいさつした後、学年ごとに分けられた教室で授業が始まった。小学3年生の教室では算数の3桁の学習。「101、102、103――」とみんなで大声を出し、覚えていった。
給食は朝と昼の2度。時間になると、子どもたちは手を洗い、プラスチック製容器を持って1列に並ぶ。割り込みは厳禁だ。600人近い児童らに一斉に提供するため、朝は豆や砂糖などを混ぜ込んだおかゆ「ウジ」を、昼は豆とトウモロコシを煮込んだ「ギゼリ」が毎食出てくる。学校の段差や階段の下の日陰で友達と一緒に食べ、その後は掃除もする。
学校の開設間もない頃から給食作りを担当するベアトリス・アコイさん(47)は、午前5時半ごろから仕込みに入る。まきを使って火をおこし、直径1メートル深さ50センチほどの大鍋で調理。昼食1回につき64キロのトウモロコシ、20キロの豆、1キロの塩を使っている。「重労働だけど、子どもたちは喜んでくれるし、ずっとこの仕事をしていきたい」
学校で何が一番好き? そう尋ねると、ディスマス君(5)は「昼の給食!」と言ってはにかんだ。次に好きなのは「朝の給食」だという。授業が終わった後、家に帰ってきたディスマス君は、バッグから容器に入れた給食の残りを取り出し、大事そうに手づかみで食べ始めた。
5畳に家族6人で暮らす
ディスマス君や他の孫の面倒を見ているロイス・ジェプコエチさん(58)は、エイズウイルス(HIV)に感染し、薬が手放せない。自宅近くで野菜を売っているが、20~30年前と比べると家賃は10倍近くに上がり、主食のウガリに使う粉も5倍以上になったという。「家ではごはんを食べられない時が多い。給食があって助かっている」とこぼした。
子どもたちの朝は早い。暗闇…
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