世界の原油市場で動揺が続いている。米国産WTI原油の先物価格が、史上初のマイナスをつけた。新型コロナウイルス対策で需要が急減し、在庫がだぶついていることが背景にある。株式市場はこのところ回復傾向にあったが、「実需」を映す原油価格の動揺は、実体経済の減速の深刻さを物語る。
ゆらぐ経済復活の期待
米国や世界の経済の先行きをめぐっては、株式市場では悲観論が和らぎつつあった。米ニューヨーク市場では主要銘柄で構成するダウ工業株平均が4月に入ってから急速に値を戻し、3月23日につけた直近の安値(1万8591ドル)から前週末までに3割超も回復していた。
米連邦準備制度理事会(FRB)による未曽有の金融緩和や、米政権による2兆ドル超の経済対策を好感したほか、ここに来てトランプ大統領が経済活動の「再開」に前のめりになっていることへの期待が膨らんでいる。
ただ、「実需」をより敏感に反映する原油市場の動揺は、経済の先行きが必ずしも楽観できないことを示す。原油のマイナス価格転落を受け、株価は日米欧で軒並み下落基調となった。
日本でも急速な景気悪化で原油需要は大幅に落ち込んでいる。世界的な移動制限で、全日本空輸、日本航空ともに4月は国際線の便数が当初計画比9割減、国内線でほぼ半減しており、「ジェット燃料の需要が急速に減少している」(出光興産の月岡隆会長)。緊急事態宣言後は自動車のガソリン需要も想定より2割減だという。
工場の稼働率を落としている…

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