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 新型コロナウイルスの感染拡大に対応する経済対策の一環として政府が行う1人10万円の現金給付をめぐり、家庭内暴力(DV)などの事情で住民票の住所と異なる場所で暮らす人にどう届けるかが、課題となっている。

 10万円の給付対象は、外国人を含めて4月27日時点で住民基本台帳に登録されている人すべて。郵送やマイナンバーカードを活用したオンライン申請で行う。

 郵送の場合は、市区町村が台帳に記録されている各世帯に申請書を送る。原則世帯主が一括申請することになっており、給付金は、世帯主の金融機関の口座に一括で振り込まれる。

 こうした世帯主を申請主体とした手法がネット上などで批判を集めている。DV被害を受けて世帯主から逃れている人や虐待で家にいられない子どもなどに、行き渡らない恐れがあるためだ。

 2009年にリーマン・ショックへの対応として支給された「定額給付金」では、DVの加害者である世帯主に対して、被害者の分まで給付金が振り込まれ、各地で「一括給付は不当だ」などとして裁判所への差し止め申請も起きた。当時、被害者救済のため国の給付金とは別に同額を独自支給する自治体が相次ぎ、加害者が被害者分も「二重取り」しているとの指摘もあった。

 高市早苗総務相は20日の記者会見で「DV被害者はお住まいの場所が加害者にばれてはいけない。そういった配慮も十分行ったうえで、迅速に給付ができる対応を取りたい」と語った。

 総務省は、DV被害を受けていることが台帳上で分かる仕組みを使い、加害者に気付かれないよう住所変更を市区町村に呼びかけてもらうことも検討中だ。その場合も含め、基準日の27日を過ぎた後で住所変更をして申請をしても、受け付ける方向で調整している。

 DV被害者を支援するNPO法人「全国女性シェルターネット」の北仲千里代表によると、保護命令が出されていたり公的に一時保護されていたりするケースはごく一部。「世帯が分かれていることを証明できる郵便物や民間シェルターの証言などでも受け取れるよう、柔軟に対応してほしい」と話す。

 ジェンダー平等政策に詳しい中央学院大の皆川満寿美准教授によると、東日本大震災など災害のあとの弔慰金や支援金などでも、世帯単位での支給の仕組みで女性が不利になる、との指摘があったという。皆川准教授は「世帯主のみが受給権をもつ設計では、全員分の給付金の使い道についても世帯主に決定権があるように見える」とし、世帯単位で申請書を届けても、振込口座は個人ごとに指定する仕組みを提案している。(豊岡亮、山本奈朱香、岡林佐和)