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 新型コロナウイルス危機に直面する世界のリーダーが、連日のように記者会見やテレビ演説を通して国民に語りかけている。自宅にとどまるよう訴えたり、国が置かれた状況を伝えたりと、内容にはさほど差異はない。だが、どんな場所で、どのような言葉を使い、どんな表情で訴えかけているのかをみてみると、それぞれの個性や本音、狙いが透けてみえる。臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんに、リーダーたちの演説を分析してもらった。

トランプ氏 「敵」を作り、強いリーダー演出

 まずはトランプ米大統領。自身の再選がかかった大統領選のさなか、連日、長時間の会見を開いて強い言葉でリーダーシップを強調している。岡村さんは3月13日の非常事態宣言時の演説に注目。宣言時に淡々と落ち着いた調子で語りかけ、冷静さを印象づけたところを挙げ、「非常事態宣言では表情こそ硬かったが、いつものトランプ氏らしい振る舞いだった」と評価した。

 「ウイルスとの闘いについて話すときは語気を強め、話す速度をわずかに速めるのは『立ち向かう強いリーダー』が自らの理想像なのだろう」と岡村さん。政府の対策を話すときに語気を強めたり、右手を空手チョップのように振ったり、広げたりするのは「有言実行のリーダー」を印象づける狙いがあるという。かたくなにマスクをつけないのも「自分の信念を貫くリーダー」を印象づけたいからではないかという。

 トランプ氏はこれまでも、敵と味方をはっきりさせることで支持率を上げてきた。岡村さんによると、この日の会見でもこの手法が使われたという。

 医療スタッフへの感謝や状況について語る時は声を強め、協力してくれる企業などについて話すときには顔を上げて抑揚をつけて話した。これは「味方」を明確にして、大きなアクションで謝意をあらわにすることで、自分の政策にプラスのイメージを強めるためだという。連日の会見で「戦争」や「敵」といった言葉で中国や世界保健機関(WHO)への非難や批判が増えているのも自分を優位に立たせて有利にみせる狙いがあると岡村さんは指摘する。

 そこにはトランプ氏の「自分が正しい、自分の常識こそが世界の常識」という自信過剰な「過信効果」も強く働いていると岡村さん。反論や批判など攻撃を受けると、この傾向はますます強くなるという。会見中に気に入らないメディアの質問を遮ったり非難したりするのも「自分が知覚している認知が現実であり、違う視点や見方はすべてゆがんでいる」という「敵意的メディア効果」の傾向が強いためだと分析する。

泰然自若、寄り添うリーダー メルケル独首相

 対照的な演説が目をひくのはドイツのメルケル首相だ。3月18日のテレビ演説では、常に座ったまま、カメラを直視してゆっくりと語った。メルケル氏に寄ったり引いたりするカメラワークも特徴的だった。

 メルケル氏は表情を変えずに語り続けた。「体を揺らすこともなく落ち着いた口調でいて、わずかなしぐさだけで、言いたいことを強調した。落ち着きと威厳を持ち、国民に寄り添うリーダー像を意識しているのではないか」と岡村さんは話す。

 岡村さんによると、同じ内容であっても、言い方や言葉の選び方、話している状況や表現方法が異なると、聴衆は全く違うとらえ方をしてしまう。この現象を「フレーミング効果(枠組み効果)」というのだという。

 メルケル氏は「慈しみ」「思い…

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