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 こんな時なので、いつもと違う趣向でお送りしようと思います。連載二十一年目にして初の試みとなる、なんと小説。しかもミステリーです。犯人側から描く「倒叙もの」。次回からはお馴染(なじ)みの刑事も登場します。「読者への挑戦」もあります。四回にわたってお送りする小説版「ありふれた生活」。どうぞお楽しみ下さい。タイトルは「一瞬の過ち」。

      ◆

 私は脚本家である。書いた台詞(せりふ)は役者が口にして初めて、作品として完成する。それ故、役者たちには最大の敬意を払っている。ただ一人を除いては。

 その男の名は大泉妙(みょう)。持ち前の明るさと頭の回転の早さでバラエティーでも引っ張りだこだが、実は、極めて優秀な俳優だ。渥美清、西田敏行といった、国民的人気俳優の系譜に連なる男だと、私は思っている。一見、軽いように見えるが実は非常に真面目、納得いかない台詞や演出があると、とことん演出家や作家(どちらも私だが)に食い下がる。私の作品との相性も良く、今では、なくてはならない俳優の一人だ。

 五年ほど前、ある休日の午後のことだった。私は滅多に自宅に人を呼ばないが、その日は珍しく彼とその家族を招いて、ささやかなティーパーティーを開いた。私は一時間ほどで仕事に行かなくてはならず、「良かったらゆっくりしていってよ」と言うと、大泉はそれを真に受けて「ありがとうございます」と言った。社交辞令だったのに。そして家族で「アナと雪の女王」のDVDを観(み)始めた。仕方なく私は彼らを残して出掛けた。後から妻に聞いた話では、結局最後まで観てから、悠然と帰っていったという。まだ私も観ていなかったのに。

 大泉妙を殺そうと誓ったのはその時だった。殺意というのは、なんでもない瞬間に生まれる。

 ずっと殺す機会を窺(うかが)…

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