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小説「一瞬の過ち」(2)

 俳優、大泉妙を射殺した後、私はホテルの自室に戻った。襟元に返り血が付着していたので、用意していた服に着替える。鏡を見ると額にも小さな血の痕があった。慌ててハンカチで拭う。

 そろそろ舞台挨拶(あいさつ)の時間だ。外が慌ただしくなった。廊下に出てみると、スタッフが走り回っている。一人を捕まえて何があったのか尋ねた。彼は私を見てひどくびっくりしていた。シークレットゲストだったので当然だ。彼は「大泉さんが亡くなりました」とだけ答えて足早に走り去った。

 警察が来て現場検証が始まった。私はホテル内に足止めされた。ラウンジに行ってみた。案内してくれた従業員も私を見て目を丸くしていた。

     

 コーヒーを飲んでいると、突然背後から「脚本家の三谷さんですね」と声を掛けられた。振り返ると、黒いスーツの細身の男が立っていた。毛量が多くやけに襟足が長い。私が頷(うなず)くと彼は慇懃(いんぎん)に頭を下げた。「捜査一課の古畑と申します。ちょっとだけお時間よろしいですか」「もちろんですよ」「大泉さんの件は既にご存じですね。気を悪くされたら申し訳ないのですが、事件があった時はどちらにいらっしゃいましたか」「ホテルの部屋にいました」「証明出来る方はいらっしゃいますか」「残念ながらいませんね。ただ…」

 私は用意しておいた「アリバイ…

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