【動画】海洋冒険家・白石康次郎さんの「私の一冊」=吉永岳央撮影
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私の一冊「オケラ五世優勝す」(多田雄幸著)

 水平線の向こうは、どうなっているんだろう? いつか、世界一周を――。子どもの時、地元の神奈川・鎌倉の海を見て、そんな好奇心を抱きました。

 導いてくれる一冊に出会ったのは、船の機関士になろうと水産高校に通っていた時。東京の個人タクシーのおじさんが、手作りヨットで世界一周レースに出場しちゃう。しかも、優勝。書かれていたのは、うそみたいな、本当の話でした。

 ヨットといえば、僕のイメージは石原裕次郎さんや加山雄三さん。お金がないとダメって、そう思っていた。けど、見せつけられたの。「違うよ」って。地球を相手に一人で戦う。「俺もやりたい」。本を手に、見えたのは希望でした。

 主人公の著者に会いたくて東京駅の公衆電話に向かった。ネットなんてないからね、電話帳をめくったわけ。「多田雄幸」を探し出して、自宅に押しかけて、弟子入りをして……。

 あれから30年以上か。失敗もしたけど、26歳で初めてヨットで世界一周して、今秋も一周レースに参戦する予定です。本を読んだあの日と同じように、今も毎日ワクワク。みんなも好きなことだけやるんだよ? きっと幸せになれるから。(聞き手・吉永岳央)

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〈しらいし・こうじろう〉 1967年、神奈川県出身。海洋冒険家。1994年、26歳でヨットでの単独無寄港無補給世界一周の史上最年少記録(当時)を樹立するなど、ヨットによる世界一周に3度成功。2016年、世界最高峰の単独世界一周レース「ヴァンデ・グローブ」にアジア人として初出場も、途中リタイア。20年秋、再びこのレースに挑戦する予定。

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 新型コロナウイルスの影響で、自宅で過ごす時間が増えている人も多いと思います。このコーナーでは、アスリートや指導者らが、自身の転機となった本や映画などを紹介します。