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 新型コロナウイルスの軽症患者について、加藤勝信厚生労働相は23日、ホテルなど宿泊施設での療養を基本とする方針を示した。これまでは宿泊施設のほか自宅での療養も認めていたが、埼玉県で軽症と診断され、自宅で入院を待っていた50代男性の死亡が22日に明るみに出たことなどから方針を転換した。

 加藤氏は視察先の軽症者が療養する東京都内の宿泊施設で記者団の取材にこたえ、「家庭内の感染防止の観点に加え、急な容体変化の可能性もあることから、宿泊療養を基本とする」と表明。医師や看護師が常駐する宿泊施設での療養は「より安全につながる」と述べた。厚生労働省は子どもがいるなどの事情がある人や、宿泊施設が確保できていない地域については、自宅での療養も認めるとしている。

 厚労省は23日中にも各都道府県などに通知する。現在、宿泊施設での療養やその準備をしている地域は47都道府県のうち、32あるという。

 軽症者に対する政府のこれまでの対応は、感染者の急増に追いついていないのが実情だ。当初、政府はPCR検査で陽性が確認された患者は軽症者も含めて全員入院させる措置を取ったが、医療機関や専門家などからは「このままでは病床が不足する」との懸念が続出。東京都や大阪府などは、独自で宿泊施設の確保に動いた。

 政府は2月、感染者が増えた場合に軽症者を自宅療養とする方針を示していた。4月2日には指針を出し、重症者の受け入れに支障をきたす都道府県について軽症者の自宅療養を認め、家族に高齢者や医療従事者がいる場合などには優先的に宿泊療養とすることとした。

 だが、感染者数の増加とともに自宅療養が全国的に増えると、家庭内での感染が相次いだことに加え、自宅療養中に亡くなった例も明らかになった。東京都は23日、家庭内の感染防止などの観点から、軽症者は宿泊療養を原則とするよう加藤氏に要望していた。

 菅義偉官房長官は同日の記者会見で「感染者の状況は厚労省が都道府県を通じて把握しているが、自宅で療養している方の数は現時点では把握をしておらず、今後、把握していく」と発言。政府が自宅療養者数を把握していない実態も明らかになった。(石川春菜)

埼玉県は「対応、極めて厳しい」

 新型コロナウイルスの軽症の人や無症状の人について、加藤勝信厚生労働相が23日、宿泊施設での療養を基本とするよう方針を転換したことに対し、ホテルの確保が進んでいない埼玉県側は「すぐには用意できない」と難色を示した。

 埼玉県では21日、軽症として自宅療養中だった50代男性が死亡した。同県では23日現在、医療機関に225人の患者が入院している一方、357人は自宅で待機中だ。県が確保したホテルは1カ所の111室分にとどまる。現在36人が宿泊療養している。

 県幹部の一人は「厚労省の方針の方が患者にとっては良いが、ホテルとは交渉中。用意できても全員を移すには時間がかかる。対応する側としては極めて厳しい」と語った。大野元裕知事は23日夜、「(ホテルでの療養は)我々がやろうとしていたところだし、方針に沿うしかないと思っている」と述べた。

 累計で約3500人の感染が確認されている東京都では23日の時点で、三つのホテルで約750人分を確保しており、同日時点で計203人が滞在する。

 都は17日から、PCR検査で陽性と確認された人のうち、軽症の人や無症状の人を、自宅から病院を介さずに直接、ホテルに移送し始めた。こうした人が入るホテルでは、医師や看護師が滞在するとともに、滞在者向けに血液中の酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」を配備し、体調を確認しているという。

 一方で都によると、無症状の人などは制約の多い宿泊施設より自宅での療養を望むことがあるという。都内で自宅で療養している人の数について、都は保健所の業務が忙しいため、集計できていないとしている。(長谷川陽子、山田暢史、荻原千明)