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 新型コロナウイルスの感染が広がるなか、4月から、パソコンやスマートフォンを介した「オンライン診療」が初診でも可能になった。政府の専門家会議も22日、人との接触を減らす対策として推奨した。実施する医療機関には患者からの問い合わせが相次いでいる。厚生労働省は近く、オンラインや電話診療を採り入れている医療機関の一覧をウェブに載せる予定だ。

 「お変わりないですか? 前回の血液検査の結果、とてもいいので、お薬は1カ月分入れておきますね」

 「はい。在宅勤務で体重が増えちゃって……」

 「人混みでないところを散歩するのは問題ない。運動を心掛けてもらえれば」 14日、東京都千代田区の「九段下駅前ココクリニック」で石井聡院長がパソコン画面を通じ、団体職員の50代の女性と向き合った。女性は高脂血症で通院中。緊急事態宣言が出て在宅勤務となり、外出が心配でオンラインを初めて利用した。最近の体調を伝え、薬の処方箋(せん)を自宅に郵送してもらう手続きをとった。「音声も聞きとりやすいし、すごく簡単」と女性は満足そうだった。

 クリニックは2017年に通院患者向けのオンライン診療を開始。新型コロナの感染拡大で女性のようなケースが増え、期間限定で認められた初診も加わり予約が殺到。1月は1カ月で5人程度だったのが、2月下旬から急増し、3月は週平均で5人ほどに。今月20日以降は初診も含め1日10人以上になる。

 都内の一人暮らしの男性(29)は初診で利用した。40度近い発熱と激しいせきに見舞われたが、保健所への電話もつながらず、病院にも足を運べなかった。報道で「初診OK」と知り、ネットで探して予約した。

 画面越しに体温を伝え、せきの様子を診てもらった。「先生は丁寧に話を聞いてくれて安心感があった」。クリニックからの報告で保健所とも連絡が取れた男性はその後、自宅で静養を続ける。「初診OKのインパクトは強く、急激な関心の高まりを感じる」。石井院長はそう話す。

 動きは他の医療機関にも広がる。約1200医療機関とオンライン診療システムの契約をするメドレー(東京)によると、3月の診療回数は2月から倍増。約2500医療機関に提供するMICIN(マイシン)(東京)でも、「3月時点で、昨年12月の3倍の保険適用での診療があった」。4月の医療機関からの問い合わせはいずれも3月を大きく上回るという。

電話活用する病院も

 あわせて規制が緩和された電話による診療を活用する病院もある。筑波大学付属病院(茨城県つくば市)では、3月、病状が安定している通院患者を対象に電話での再診を始めた。県内唯一の特定機能病院。地域医療の最後のとりでとして、外来患者と付き添いの人たちからの院内感染を阻止し、医療崩壊を防ぐ狙いだ。

 患者がネットで申し込むと、予約時刻に担当医から電話がくる。通常の診察と同様、体調や薬の服用状況などを医師が問診し、処方箋(せん)はかかりつけの薬局にファクスされる。患者は薬局で薬を受け取る流れだ。

 外来対象となる患者は1日のべ約2千人。電話再診の利用は増加傾向で、4月中旬以降、全体の1割を超える。担当する根本清貴准教授(精神神経科)は「患者さんも来院を避けたいという思いがあり、おおむね好意的に受け止められている」とみる。(熊井洋美、姫野直行、今直也)

誤診の危険性、「高齢者使いにくい」 懸念も

 厚生労働省は18年にまとめたオンライン診療の指針で、禁煙外来などを除いて初診は医師との対面を原則とした。

 だが新型コロナの感染拡大が懸念された3月、政府の規制改革推進会議や与党などから、初診でも可能とするよう求める意見が相次いだ。通院を減らすことで、医療機関への感染を防ぎ、市民の感染リスクも減らせると考えたからだ。

 厚労省は基礎疾患など患者の情報がわかる場合に限り認める方針だったが、4月に入り感染はさらに拡大。最終的に、患者情報の有無にかかわらず誰でもすべての疾患で認めることにしたが、個々のケースは「医師の責任」で可能か判断するとした。ほかに電話での診療、服薬指導も対象となる。期間は感染がおさまるまでに限定した。

 ただ、画面越しの映像と問診だけなので、医師が患者から得られる情報は少ない。見落としや誤診の危険性もはらみ、現場からは戸惑いの声もあがる。ココクリニックの石井院長も「基本は対面。全身状態を見られない患者には慎重にならざるを得ない」。状況に応じて対面が必要な場合も出てくるという。「熱が出た」と山梨県から電話をかけてきた80代の女性には「近くの病院に」と促した。

 患者の受診環境も一人ひとり異なる。都内の別のクリニックで80代の両親と一緒にオンラインで初めて診察を受けた女性(51)は、「非常に便利だが、若い人でないと使いにくい。両親だけでは無理だと思う」と話した。