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親が感染したら子どもは誰に? 今から備えておくことは

新型コロナウイルス

小林未来 山本奈朱香 森本美紀
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、子どもを持つ保護者の間で「自分が感染したら」という不安が広がっている。自身と夫の感染が確認されたフリーアナウンサーの赤江珠緒さんも、感染確認前に不安を吐露していた。厚生労働省は親族間の保護が基本という姿勢だが、感染したときの重症化リスクが高い祖父母には預けにくいという声もある。いざという時のために、いまからできる備えは――。

赤江さんも吐露した不安

 「我が家の場合は親が共倒れになった場合の子供の面倒は誰がみるのかという問題があります」。赤江さんは夫の感染が分かり、自身の感染が確認される前、出演するTBSのラジオ番組のウェブサイトでこうつづっていた。

 「私たちが感染したら、子どもはおかあさん(義母)に預かってもらうしかないかな」。東京都内で2歳の息子を育てる女性(41)も最近、夫とそんな相談をしている。高齢者の重症化リスクを考えると不安もあるが、他の選択肢は思いつかない。「2人とも実家が遠かったら、途方に暮れると思う」

 離婚し、都内で小学生の子ども2人を育てる男性(47)の両親は遠方に住む。自身が感染すれば子どもたちも濃厚接触者になってしまうため、友人家族にお願いすることも考えられない。「考えなきゃいけないけど……。どうすればいいんだろう」

 厚生労働省は、親が入院した場合の子どもの保護について、基本的には親族間で、という姿勢だ。4月10日に自治体に向けて出した通知では「親族等による保護が難しい場合には(中略)児童相談所への相談も想定」となっている。

 児童相談所(児相)には、虐待や非行などで保護が必要だと判断した場合、短期的に子どもを預かる「一時保護」という枠組みがあり、子どもの滞在先としては一時保護所や児童養護施設などがある。厚労省は、親族間での保護が難しい場合、こうした施設の利用も想定しているという。

 実際の対応に当たる自治体側は困惑する。関東地方にある児相の担当者は現在、対応を協議中。施設は共同部屋が多いため難しいと感じており、「受け入れるとなれば態勢に工夫が必要だ」。

 兵庫県明石市感染対策局も「障害のある子や高齢者のいる家庭など、弱者にしわ寄せがいくという問題意識は持っている」というが、具体策はまだ検討中だ。

 滞在先となりうる一時保護所の現場からは悲鳴があがる。関東地方で勤務する職員によると、平常時でも定員超過になることがあり、定員の倍の人数の子どもを1室に入れたり、リビングに布団を敷いたりしたこともあったという。「人との距離は取れない。感染者が出ても隔離は難しい」と話す。

 東京都杉並区によると、両親とも陽性、子どもが陰性で、親族による保護が難しかったケースが3月に数件あったという。このときは、一時保護の枠組みを利用。ただ感染拡大防止の観点から一時保護所には入所させず、個別に受け入れてもらう病院を探し、「一時保護委託」という形で入院措置をとった。ただ、親とは別の病院だったり、同じ病院でも別室となったりしたという。

 担当者は「これらは軽症者もすべて入院が必要だった3月のケース。今後、こうした例が出てきたら個別に対応するしかない」と話す。

あらかじめサポート役を決めて

 親が感染した時に備え、しておくべきことは何か。

 日本小児感染症学会理事長の尾内一信・川崎医科大学教授は「親のサポート役を誰にするか、親族間であらかじめ話し合っておいてほしい」。感染したら外出はできず、家事や育児も難しくなる。重症化のリスクを考えると祖父母に頼るのも可能なら避けたい。「親族間で助け合う場合でも、まずは若い世代の人を検討してほしい。祖父母に頼る場合は、周りが祖父母をサポートして疲れないように気をつけて」と呼びかける。

 他にも▽食料・食事を運んでくれる人を確保する▽解熱剤などの置き薬を用意しておく▽かかりつけ医の情報、常用している処方薬、平熱・体質、学校・保育園の連絡先などを紙にまとめ、家族やサポート役と共有しておく――といったことが大切だという。

 また、障害児や医療的ケア児など日常的にケアが必要な子については「相談支援専門員や主治医などに事前に相談し、いざというときに頼める態勢を今から考えておいてほしい」とアドバイスする。

障害ある子の親も悩み深く

 シングルマザーを支援する団体「シンママ大阪応援団」(大阪市)には、切実な声が寄せられている。

 医療機関で事務職に就く30代の女性は、中学生と高校生との3人暮らし。「医療用マスクもない毎日の仕事の中で、不安感しかありません」とつづり、経済的な心配も吐露する。「休校になっていますが、親は毎日通勤ラッシュの中を移動しています。親から子にうつったら終わりだし働き手がなくなったら生活できません」

 障害のある子どもと暮らす親の悩みも深刻だ。

 神奈川県内で小学生の息子2人と暮らす母親(37)は難病を患い、主治医から「コロナに感染すれば重症化しやすい」と告げられている。手足の関節の痛みを薬で何とか抑え、日常を乗り切る毎日だ。

 子ども2人には自閉症と知的障害があり、こだわりが強く、環境の変化にもなじみにくい。特に重い障害のある兄は、じっとしているのが苦手で、常に見守りが必要だ。

 母親が感染し入院した場合、児童養護施設が本当に受け入れてくれるのか、受け入れてくれても障害の特性に応じた対応をしてもらえるのか、と心配は尽きない。夫は海外に赴任中で、母親の親は基礎疾患があり、感染リスクが高い。夫の親も高齢で遠方で暮らすため「頼れる先がない」。

 母親が入院したら同じ病院に子どもの居場所をつくってもらうことも考えるが、環境の変化が苦手な障害のある子に配慮する病院があるのか、と思う。「医療崩壊が深刻になりつつある今、結局、自宅療養しかないのでしょうか」小林未来、山本奈朱香、森本美紀)

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