松山商野球部にあの闘将 「この期間にも変われるぞ」

高岡佐也子
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 甲子園で春夏合わせて7度の優勝を誇る愛媛の古豪・松山商に、同じ愛媛の伝統校で、母校の今治西を11回甲子園に導いた大野康哉監督(48)が今春、異動した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、まだグラウンドでの「熱血指導」は始まっていないが、夏へ向けて闘志を燃やしている。

 8日昼、臨時の職員会議が開かれ、部活動の休止が決まった。その日の夕方に松山商の監督として初めての練習に臨む予定だった。「まだユニホームに袖を通していないどころか、グラウンドにも立てていないんですよ」。出ばなをくじかれながらも「こんな状況でも出来ることはあると思っています」と前向きだ。

 15年間率いた母校・今治西のユニホームを脱いだ。「いつかは母校を去るとわかっていながら、さすがに寂しかった。でも、『大きな仕事が待っている』とも感じました」。赴任後の短い間にも、松山商OBや学校の教職員たちから「なんとしても甲子園に」という並々ならぬ思いを感じ取ったという。

 松山商は2001年夏を最後に甲子園から遠ざかる。その姿を外から見てきた大野監督は「長い間甲子園に行けない、大きく、深い理由があるのだろうと思っていました。甲子園での松商の姿を知らない現在の選手たちも、どこか自信がないように見えます」。

 ただ、監督が代わることで「化学反応」が起こることもある、と考える。「まずは僕が指導者として選手たちに認めてもらうことを第一に、日々を過ごしています」。13人の部員が暮らす寮に住み込む。ウイルスの感染予防にも細心の注意を払い、「ずっと寮のテーブルを拭いています」。

 5月6日まで休校。午前中は勉強に充て、午後は各自で素振りなどをする。そうして夏を待つ選手たちに「夏まで時間がない。難しいことをしようとするのではなく、シンプルな野球を」など、野球の考え方や日々の過ごし方について語りかける。全体ミーティングができないため、監督の話を聞いてメモを取る寮の部員が、61人の部員全員とLINEで内容を共有している。

 「活動休止中とはいっても、休憩しているのではない。集まれないだけであって、夏へ向けての活動の途中であることに変わりはない」と大野監督。「それに、この期間にも変わることはできる」。5度の全国制覇を果たした「夏将軍」の復活へ。常に選手とともにグラウンドに立ち、真っ黒に日焼けした姿で声を張り上げる闘将は、やはり意気盛んだ。高岡佐也子

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