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 「子どもと家にこもりきりでイライラする」「仕事も育児も家事もうまくいかない」――。新型コロナウイルス対策で学校や保育所などが休みになり、「おうち育児」が続く親たちから悲鳴が上がっています。働き方も大きく変わり、在宅で働く人もいれば、仕事がなくなってしまった人も。どんな悩みがあり、工夫できることは何か。親たちと専門家に聞きました。

オンライン座談会 仕事妨げられイライラ 夫の育児参加きっかけに

 自宅でひたすら子どもと過ごし、仕事もする。どんな毎日なのか、テレワーク中の記者も参加してオンライン座談会で語り合いました。

親子にたまるストレス

後藤太輔記者 夫婦ともテレワーク中です。子どもがパソコンに触ってきたり、ひざに乗ってきたり、仕事が進まずイライラします。動画を見せるとおとなしくなるけど、あぁ3時間見せちゃった……と罪悪感。

Aさん(東京都・50代 高2、中3の父。在宅勤務、妻は交代勤務) 中高生のうちの子たちも動画とゲームばかり、ほとんど勉強しません。生活リズムも崩れている。

Bさん(東京都・30代 4、1歳の母) 育休から復帰予定でしたが、保育園の休園で延期に。在宅勤務中の夫を邪魔しないよう、幼児2人を静かにさせたり公園を回ったり。子どもと夫の帳尻を合わせるのにへとへと。本音は家にいる夫にもっと育児家事をしてもらいたいのですが。

Cさん(埼玉県・40代 小4、5歳の父。夫婦ともに在宅勤務) 普段より家事も大幅に増えました。料理に洗い物、買い物……。子どものおもちゃなどで家はぐちゃぐちゃ。仕事中に「おなか減ったー」「ひまー」と頻繁に言われると、やはりイラッとします。

後藤 子どものストレスも心配です。実は最近、昼間にお漏らしするようになりました。子どもは「遊んでいてトイレ行くの忘れちゃった」と言っているけど、僕たちが「話しかけるな」オーラを出していて遠慮させたんじゃないかと……。

Dさん(東京都・30代 5、2歳の母。1日おきに出勤、夫は在宅勤務) 年長の娘は、友達と遊ぶのが楽しくなった年ごろ。小学校に向けた準備期間に、長い間子ども同士の関わりが少ないのが心配です。

テレワークも交代出勤も大変

市川美亜子記者 今まで会社では仕事だけ、帰宅したら母に戻る、とすっぱり切り分けてきました。それが今は混然一体。子どもにはあたってしまうし、書きかけのメールが何本もたまり……。仕事も家のことも中途半端で生産性が落ちます。

Eさん(神奈川県・40代 小6、小4、小1の母。在宅勤務) 小学生3人の勉強に付き合っていると、同時並行で仕事は無理。学校の宿題に加えて複数社のオンライン学習を契約して、盛りだくさん。追加の教材代などで約2万5千円と出費もかさむ一方で、収入は減りそうです。

Dさん 1日おきの交代勤務で私が職場に出る日は、在宅の夫が幼児2人を世話。帰宅すると、育児をほぼしてこなかった夫は、この世の終わりかのような疲弊ぶり。人数半分で同じ業務量をこなした私も疲れ果てているのですが。「それを私はワンオペでやってきたんだよ」という言葉はぐっとこらえます。

実践している策は

Fさん(シンガポール・30代 小1、5歳の母。同国も行動制限中) ママ数人でそれぞれの得意技を生かし、オンライン授業を始めました。絵を教えたり、メイクアップレッスンをしたり、子どももその間は熱中してくれます。

Cさん 会議など仕事に集中したい時間は、事前に子どもに伝え、邪魔しないようお願いします。意外に分かってくれる。本当に疲れた時は、「10分だけパパ休んでいい?」と話し、部屋に入って瞑想(めいそう)。無心になることは大事です。テレワークは、以前は子育て中の人のためのものというイメージでしたが、今回多くの人が使い、利点も弱点も相互理解が進んだと思う。これを機に制度改良が進み、社会に広がればと思います。

藤田さつき記者 とはいえ子どもの世話をしながらの日中のパフォーマンスは低下するし、それを補うため深夜早朝の作業で睡眠不足です。

Bさん 私も復帰後はテレワークになると思いますが、子ども2人をあやしながらこの1時間のオンライン会議だけで疲弊。不安です。

Eさん ある程度「割り切り」も大切なのかな。私は今は家族と健康が大事なので、仕事は無理せず堂々と「できませんでした」と言うことにしました。子どもたちはそう学校好きでもないので、これを機に新しい学びや遊びも模索したいです。

Aさん うちも、子どもを放置しがちになってゲームばかりになるのも、期間限定なら仕方ないのかなと。今の子どもたちは忙しいので、長い自由時間を好きなように過ごすのも貴重な体験だと思います。

Fさん 実はシンガポールでは、日本に比べて互いの事情に寛容なんです。各家庭の大変さを分かって補い合って、完璧を求めない。「お互い様」という考え方なので、こっちで仕事と育児の両立はわりと楽です。日本にもそんな文化が広まればいいですね。

後藤 日本だと「子どもを持ったのは自分の選択。自己責任で両方がんばれ」ですよね。どんな事情の人も暮らしやすく、母親も父親も働きやすく、育児しやすい社会になればいいなと思います。

Dさん うちのパパも今は2人同時にお風呂に入れるだけでパニックですが、発展途上なのかも。コロナ下の子育ては大変ですが、夫の育児参加にはいいきっかけになったのかもしれません。

家事分担 進むケースも 京都大教授 落合恵美子さん

 「家にいる(ステイホーム)」ことの実態を知るため、「自分もしくは同居家族が新型コロナの影響により、在宅勤務を経験した人」を対象に、4月8~15日に大学院生の鈴木七海さんと共にウェブ調査を実施しました。回答者は340人で女性が6割、男性が4割、首都圏が78%。1世帯内に在宅勤務になった人が複数いるケースも25%あり、子どもと同居は42%、学校や幼稚園・保育所の休校・休園で子どもも家にいるケースは30%にのぼりました。

 「在宅勤務になって困ったこと」を自由回答であげてもらうと、仕事関係(35%)、運動不足や生活リズム(23%)に続き、家事育児の負担(15%)や家族関係の悪化(15%)。家事育児の負担については、全体の30%が「家事の総量が増えた」と感じており、14%は食事の回数の増加やそのための買い物の負担を特筆しています。社員食堂や給食で済ませていた昼食も含め、「毎日3食を自宅で食べることになり、いつもより食材を多く消費するようになったのに、買い物リスクが高い」と窮状を訴えています。好きで混雑したスーパーに詰めかけているわけではありません。

 増加した家事育児の負担は「子どものいる女性」に最も重くのしかかっていることも分かりました。「子どものいる女性」の37%が家事育児の負担に困ったとしているのに対し、「子どものいる男性」では15%、「子どものいない女性」では10%。学校の休校や保育所の休園で子どもが家にいる女性では、さらにこの割合は44%に上昇します。「夫も在宅していますが、彼は自分の仕事部屋で集中できています。一方、私のほうは家事、子供の面倒をみながらの仕事なのでまったく集中できずはかどりません」というように、夫婦とも在宅勤務でも夫の仕事が優先されるケースがつらそうです。子どもを保育園に預けられなくなり、在宅で「夜間勤務」、さらには「休業した」ケースもあって大きな問題です。

 他方、「在宅勤務になって良かったこと」として、子どものいる人は男女とも4割以上が「家族関係の向上」をあげています。「家族と過ごす時間が増えた」のは特に男性にはうれしかったようです。「家事育児の分担が進んだ」ケースもあります。「コロナ以後」につながる新しい働き方も芽生えたかもしれません。(寄稿)

つらいのは 愛情あるから 小児科医 Dr.リノさん

 京都府の病院で小児科医をしています。診察で多くの親御さんに接してきましたが、「子どもと一緒にいるのがしんどい」「私は親失格かも」と悩む人がすごく多い。ましてや休校休園がいつまで続くかも分からない今、ぐずる子ども、感染の不安、単調な生活、進まない仕事や家事、頼る先も愚痴を言う相手もいない……となれば、イライラやつらさが募るのは当然です。

 子どもをしんどく感じるのは、愛情があるからこそ。泣いていても、子どもの食事も勉強もどうでもよければ、いっそ楽でしょう。僕も3人を子育て中ですので、がんばって作ったご飯を余裕で拒まれた時の脱力感、よく分かります。ちなみに現在ストレスMAXの我が家では、この機会に子どもと読書やお菓子作りにトライしましたが、どれも失敗。でも子どもってそんなものです。

 「1ツライ、2ツライ……」のツイートをした時、「親なんだから甘えるな」という反応もありました。こうした世間のプレッシャーや日本に根強い「育児規範」のようなものは、親をますます追い詰めます。もっと育児しやすい方向に社会全体がシフトしてほしいと切に願って、僕は「Dr.リノ」としてツイートし続けてきました。実践的な医療情報もちょいちょいつぶやいています。

 メリハリのない毎日で体調を崩す親子も多いと思います。睡眠が乱れた時は、人間は「朝起きた15時間後に眠くなる」性質があるため、まずは起きる時間を設定しましょう。朝は汁物だけでも口にして。そして30分でいいので散歩のような軽い運動をすると、食欲がわきリフレッシュにもなります。帰宅後は手洗いを忘れずに。そして1日1回は、頑張っている自分を褒めてお菓子や漫画タイムなどのごほうびをあげることも大切ですよ。(聞き手・藤田さつき)

1日の予定 家族と共有を ユニアデックス未来サービス研究所 八巻睦子さん

 家族の人数や子どもの年齢、住環境によって悩みは異なりますが、家族と情報共有し、協力し合うことはとても大切です。毎朝、それぞれの一日の予定を確認しましょう。夕方に一日を振り返ると、改善できることが見つかるかもしれません。

 仕事はメリハリ。集中しなければできない仕事と、単純作業とに仕分けし、「どうしても」という仕事を、子どもが何かに夢中になっている時間や昼寝の時間に済ませます。

 住宅事情からリビングで仕事をしている人が多いようです。リビングは自然と家族が集まる場。子どもがそばで話しかけてくれば、仕事の手も止まりがちです。夫婦のどちらがどの場所を使うかという調整も必要です。1人だったら簡単に済ませる昼食も、子どもがいるとそれなりにしなければと思ってしまうでしょう。

 テレワークは働き方の選択肢の一つであり、子どもがそばにいる状況を前提として広まったものではありません。いまはあくまでも非常事態。会社も社会も「子どもが一緒にいても仕事ができる」と簡単に考えるべきではないでしょう。

 ただ、今回手に入れたノウハウは、これから子どもの発熱で出社できない時など、生かせる場面がたくさんあると思います。個人の事情に合わせて仕事場を選べるというテレワークのメリットを生かした働き方が、今後広がるよう願っています。(聞き手・田中聡子)

できたことを数えてみて 子育てアドバイザー 高祖常子さん

 学校に行くことで切り替えができていた子どもたちも、家に居続けると気持ちが高まりません。親は収入の不安があり、子が言うことを聞かず、勉強もしない。親子でイライラして、取っ組み合いのけんかになったなどの話が耳に入ってきました。

 カッとなっても、子どもをたたかないことだけは心に決めて下さい。そして、何がイライラの原因か、親子で話し合って。子どもはコロナのことがわからない。勉強に遅れがある。そんな不安があるのかもしれません。言語化することで心がほぐれ、中にはネットで調べて困りごとが解決することがあります。一緒に取り組んでみてください。

 怒ってしまった、家事ができない、仕事が進まない。しかたないです。できないことではなく、元気で過ごせた、散歩できたといった、できることを数えて下さい。子どもやパートナーと1日の予定を話し合い、「この1時間だけは仕事に集中させて」という時間を設けるようにするといいでしょう。

 子どもが小さいひとり親は、預け先もなく人に頼れずとても大変だと思います。苦しいときは、児童相談所や、相談専用ダイヤルに電話を。生活が苦しければ、自治体に連絡してください。

 パートナーが家にいることが増え、家庭内暴力も増える恐れがあります。行政には、相談しやすいよう、電話以外にSNSでの相談の仕組みを整えてほしいです。特に初めて妊娠・出産する女性には、助産師さんから電話やSNSで問いかけをする仕組みがあればと思います。それら窓口の情報の発信も重要です。

 海外では、首相が子どもの相談に乗って助言することも。「あなたが悪いから怒鳴られたりたたかれたりしているわけではないんだよ」など、日本でも、子どもにわかりやすい発信をしてほしいと思います。(聞き手・後藤太輔

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高橋美佐子も担当しました。

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