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 学術や芸術、社会福祉など、様々な分野で功績のあった人をたたえる2020年春の褒章の受章者が決まった。政府が28日付で発表した。受章者は660人(うち女性190人)と22団体。29日に発令される。

 学術研究や芸術文化への功労者に贈られる紫綬褒章は19人(同3人)。落語家の春風亭小朝(本名・花岡宏行)さん(65)のほか、俳優の藤山直美(本名・稲垣直子)さん(61)、直木賞作家の篠田節子さん(64)らが受章する。

 危険を顧みず人命救助にあたった人に贈られる紅綬褒章は4人(同2人)と2団体。今回の受章者で最年少だった福岡県宗像市の藤島海琴さん(14)は、昨年8月、海で溺れていた女児を自ら飛び込み、救出した。

 ボランティア活動が対象の緑綬褒章は14人(同12人)と20団体が受章する。長年一つの仕事に打ち込んだ人への黄綬褒章は191人(同20人)に、公共の利益などに尽力した人への藍綬褒章は432人(同153人)にそれぞれ贈られる。

25歳で真打ち 春風亭小朝さん

 25歳で36人抜きの真打ちに。異例の昇進でスターへの階段を駆け上がり、30日間連続独演会など新しい企画を実現させてきた。

 落語界初の日本武道館公演は、二つ目時代にコンサートを見ながら「僕はここでいつかやるんだろうな」と考えていた。その信念が大事だと、いまはわかる。「『こんな人がいたらいいな』と思ったことを、自分でやったんです。後輩たちに夢を与えたかな」

 現代性あふれる笑いを古典落語に採り入れてきた。最近は独演会に来た観客が「いい気持ち」になることを意識。「興行が赤字になってもいい」とまで言う。

 卓越したプロデュース力を最も発揮したのが、2004年から東京都心で5年間催した「大銀座落語祭」。古今亭志ん朝や五代目柳家小さんら大物が相次いで世を去った時期だった。「落語界は、東西の壁を越えて外に発信する必要があった」と振り返る。

 いまや落語会が全国で催され、若手中堅に人気者が続出しているが、落語ブームと呼ぶことは否定する。「300人の小屋(会場)がソールドアウトするのがブームなら、ものすごく悲しいですよね」。1人で8千人を集めた自負が、瞳の奥で光った。(井上秀樹)

社会派エンタメの一線 篠田節子さん

 SFやホラー、ミステリーなどのジャンルにとらわれず、社会派エンターテインメントの第一線を走り続けてきた。「人間的にも、作品的にも、円熟や成熟からはほど遠い」と話す。

 市役所に勤めながらカルチャーセンターなどの小説教室に通った。97年、「女たちのジハード」で直木賞を受け、「仮想儀礼」「鏡の背面」と毎年のように作品を発表。題材は疫病、カースト制度、イスラム過激派、薬物依存と幅広く、社会への鋭い問題意識から、その時々の空気感を巧みにすくいとってきた。「そのつど取材を通して時代を見ることができた。大きく日本が変わっていったと実感しています」

 デビューして30年。受章をありがたいと思う一方で、新型コロナウイルスの感染拡大に対し、「医療現場や流通の現場で命がけで仕事をする方がいる中、このような形で顕彰されるのは正直、心苦しい」。ただ、文化の底力が試されているとも感じる。「病原体の脅威以上に差別やヘイトが出てきている。どうものを見て、判断力を養うのかは文化の力にかかっています。少しでも貢献したい」

 問題意識は年々広がり、いまは地球規模の気候変動と民族間の対立に関心を寄せる。「この時代にしか書けないものをきっちり書き、後の世代に残したい。日本の小説のメインストリームから外れて、海外の作品と真っ向勝負できるようなものを、と思っています」(興野優平)