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 新型コロナウイルスの影響で全国に緊急事態宣言が出され、大幅な外出自粛が求められている。感染の拡大を防ぐことは大切だが、普段とは違う状況に長く置かれることによる戸惑いや不安による心の健康への影響が懸念される。

 こうした状況は世界的にも同様。災害など緊急時に人道支援や精神保健・心理社会的支援などに関わる複数の国連機関の間で連携、調整をする常設の委員会「IASC」が、新型コロナウイルス感染症に対する心のケアについての覚書を作成した。その日本語訳を、福島県立医科大のチームがまとめ、同大ホームページ(https://www.d-kokoro.com/別ウインドウで開きます)で公表した。行政や専門家向けの内容もあるが、一般の人にも参考になる。

 新型コロナウイルス感染症特有のストレス要因として▽自分が感染する、他人に感染させてしまうのではというリスク▽他の健康問題による発熱のような症状を新型コロナウイルス感染症と間違えてしまう恐怖▽休校によって子どもが一人で家にいることに対して心配が増す――などを挙げている。

 心の健康への影響が特に大きいのは、社会的弱者とされている子どもや高齢者、妊娠中や授乳中の女性らだという。

 高齢者は若者に比べ、SNSなどの連絡手段を多く持たず、情報源が限られている。通っていたデイサービスの休業といった事情によっても孤立しやすい。特に認知症の症状がある人は、感染症の発生や隔離によって、不安や怒りを感じやすいという。

 そのため、何が起こっているのかという事実や、感染リスクを減らすにはどうしたらよいのかといった情報を共有し、必要性に応じて繰り返し伝えることが大切だという。明確でシンプルな言葉や大きな文字で伝えるのがいいという。

 また、子どもは、不安な状況に対して、保護者にしがみつく、引きこもるといった行動をとったり、悪夢を見たり、おねしょをしたりすることがある。安全な場所で、不安な気持ちを表現できれば、安心して落ち着くことがある。

 遊んだり、絵を描いたりするなど、子どもが怒りや恐れ、悲しみなどの感情を表現できる方法を見つけられるように、保護者が手助けをしてほしいという。可能な範囲で、従来と変わらない日常生活を過ごすのも大切だ。

 覚書を訳した同大災害こころの医学講座の前田正治教授(災害精神医学)によると、心の健康を保つには、新しいことに取り組むよりも、以前から慣れ親しんでいる運動をしたり、音楽を聴いたりするのがよいという。特に運動は大切で、人混みを避けて散歩などに出かけるのがいいという。

 また、睡眠も大切だ。テレワークなどで家に居ることが多い場合も、パジャマのままで1日過ごしてしまうなど生活にメリハリがないと、しっかり眠れなくなることがある。1日1回は外の空気を吸うなどして、リズムを整えてほしいという。もし、不安が高まって眠れない時は、お酒に頼るのではなく、専門家の勧める薬を使う。新型コロナウイルス感染症関連のニュースが多いため、一日中メディアに触れていると不安が増すこともある。見るのは1日1時間と決めるなどして、頭を切りかえるようにするとよいという。

 前田さんは「2、3週間なら『我慢して』でいいが、これだけ長期化してくるとストレスのもとにうまく対処しなければいけない。今は『何かをしてはだめ』という制限ばかりが目立つが、健康のために『こうしよう』といった積極的な生活設計が必要だ」と話している。(杉浦奈実)