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 ロシア政府が延期した対独戦勝75周年記念式典について、ソ連時代に「対日戦勝記念日」だった9月3日に開催する案が浮上している。北方領土をめぐる主張を正当化する狙いもあるとみられ、日本政府は9月3日の開催なら、安倍晋三首相は出席できないとロシア側に伝達した。政府関係者が明らかにした。

拡大する写真・図版東方経済フォーラム全体会合での演説を終え、ロシアのプーチン大統領(右)と握手を交わす安倍晋三首相=2019年9月5日、ロシア・ウラジオストク、岩下毅撮影

 ロシア政府は今年、第2次世界大戦でソ連がナチスドイツに勝利したことを祝う5月9日の記念式典に、日本を含む各国首脳を招待していた。首相も出席してプーチン大統領と会談し、北方領土をめぐる日ロ平和条約交渉を前進させたい意向だったが、新型コロナウイルスの感染が国内外で広がり、式典の延期が決まった。

 こうした中、プーチン氏は24日、第2次世界大戦の終結日を9月2日から3日に変更する法案に署名した。ロシア下院のシャマノフ国防委員長は、新たな式典の候補日として、1945年にモスクワで対独戦勝パレードが行われた6月24日とともに、9月3日を挙げる。ロシア国内の感染状況を踏まえれば、9月開催は現実味を帯びる。

対日戦勝記念日の復活

 ところが、9月3日には特別な意味合いがある。ソ連時代は「軍国主義日本に対する戦勝記念日」として祝われてきた。ソ連崩壊後、この祝日の復活をめざす動きがあったが対日関係の悪化を避けるため実現せず、2010年に9月2日を祝日ではない大戦終結記念日とした経緯がある。

 大戦終結記念日の変更は、実質的に対日戦勝記念日の復活ということになる。北方領土が第2次大戦の結果として正当にロシア領になったと認めるよう日本に強く求めているロシアが、自国の戦勝国としての立場を誇示する狙いもあるとみられる。今回の法改正も、北方領土を管轄するサハリン州出身の下院議員らが3月に提案した法案がもとになっている。

「北方四島の占領正当化」懸念

 このため政権幹部は「式典が9月3日になったら、首相は招待されても出席しない」と明言。日本政府関係者によると、すでに外交ルートを通じてロシア側にも伝えているという。外務省関係者は「北方四島の占領を正当化することにつながりかねず、受け入れられない」と話しており、日ロ平和条約交渉への悪影響が懸念されている。(石橋亮介=モスクワ、佐藤達弥、二階堂友紀)