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寄稿 若松英輔(批評家・随筆家)

 今、世界は、未知なるウイルスの蔓延(まんえん)を契機とした、複合的な危機の渦中にいる。

 それは健康の回復という領域をはるかに超えたものにふくれあがっている。仮に明日、感染症に劇的に効くワクチンが開発されても、パンデミックが問題を生んだ、と考えているうちは、本質的な解決には至るまい。

 むしろ、危機は、これまで社会が、見て見ぬふりをしてきたものに起因する。見過ごしてきたもの、さらにいえば、ひた隠しにしてきた、その最たるもの、それが「弱さ」だ。

拡大する写真・図版野宿者に緊急相談会の開催を知らせるチラシを配る夜回りボランティアの男性=大阪市中央区、小川智撮影

 私たちは、身体はもとよりその内面、さらには人間関係における「弱さ」を受け入れざるを得ない場所に立っている。平常時ならやり過ごせても、不安に押しつぶされそうな日には、胸を開いて語り合う相手がいない、ということも深刻な問題になる。

 また、人間だけでなく、現代社会の構造的な「弱さ」も露見している。緊急医療体制の不備や、医療物資の不足はもちろん、社会的、経済的に「弱い」立場にいる人たちへの支援が十分に行われてこなかったことが、感染拡大の要因の一つとなり、社会全体の危機にもつながっている。

 政府や地方自治体が、さまざまな支援策を打ち出す。すると、それでは不十分だという声が街から上がる。だが、そうした喧騒(けんそう)から疎外された場所で、どの施策からもあぶれている一群の人たちがいる。

 たとえば、家庭内暴力から逃れ…

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