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 つぶらな瞳、ふわふわで真っ白な羽毛に包まれたお団子のような小さな体。その姿を見るたび、多くの人が「かわいい」とため息をつく。北海道に住む野鳥シマエナガは「雪の妖精」と呼ばれ、お菓子やグッズのモチーフにもなっている。じわじわ広がる人気の理由に迫った。

意外と俊敏 札幌の都市部にも

 2月下旬の早朝、道東の林の中。飛び回る小鳥の群れの中に、「ピチッ、ジュルリ」と鳴く白い姿を見つけた。すばしっこくて、なかなかカメラがとらえられない。ようやく撮れたと思ったら、ピントが合っていたのは手前の枝。望遠レンズで連写を繰り返し、その姿を何とかとらえたのは、何百枚も撮ったうちのわずか数枚だった。

【動画】真っ白な顔につぶらな瞳 「雪の妖精」シマエナガ=やなぎさわごうさん提供

 シマエナガは日本全国に生息するエナガの亜種だ。14センチの全長の半分が尾で、体の部分だけだと日本最小の鳥だ。札幌市中心部の大通公園など都市部の公園でも目にすることができる。

 もともと、道内のバードウォッチャーの間では、かわいい鳥の一種として人気だったという。ここ数年で、その存在が一般に知られるようになった。

写真集が異例のヒット

 鳥に関する講演会や執筆活動などをしている、バードウォッチャーの「♪鳥くん」こと永井真人さん=千葉県我孫子市=が立役者の一人だ。2014年、道東・弟子屈町の宿「鱒や」の近くでシマエナガを見ることができるという記事をバードウォッチング専門誌に書いた。宿のオーナーが庭に置いていた鳥用のエサ台に集まっていたのだ。宿にはその後、野鳥の愛好家やカメラマンがよく訪れるようになった。

 その中に、名古屋市在住の元報道カメラマンで動物写真家の小原玲さん(59)がいた。16年11月に出版した写真集「シマエナガちゃん」(講談社)は2020年4月までに約4万2千部を発行。担当編集者は「動物の写真集にしては異例のヒット」という。野鳥愛好家ではない人にまで一気にシマエナガの存在を知らしめ、多くの写真家が追いかけるようになった。

認知度アップにSNSが活躍

 SNSで多くのかわいらしい写真がシェアされていることも、人気に拍車をかけている。

 札幌市在住の写真家・やなぎさわごうさんがシマエナガを知り、コンパクトデジカメを手に近所の公園を訪れるようになったのは15年12月のことだ。動きが俊敏なため撮影に苦戦し、本で習性を調べた。一眼レフと望遠レンズを使い出すと、少しずつ納得のいく作品が撮れるようになった。羽毛を膨らませ、最もかわいらしいと言われる冬は毎朝、日の出前から公園に出向き、数時間かけてシマエナガを探す。撮影する写真は1シーズン5万枚ほどにのぼるという。

 16年2月に開設したツイッターのアカウント「ぼく、シマエナガ。」(@daily_simaenaga)では写真のほか、シマエナガを模した自作のケーキやおにぎりなども発信してきた。「ツイッターでは、ネガティブな意見が目につきやすい。ただただかわいく、誰も傷つかない写真を流すだけのアカウントがあってもいいと思った」。現在、「ぼく、シマエナガ。」には17万以上のフォロワーがいる。

 冬に出会うには、零下10度以下の極寒の中で何時間も待つこともある。どこにでもいるという北海道でも、その姿は私たちに簡単にはとらえられない。その絶妙な距離感も、人気の理由なのかもしれない。(天野彩)

モチーフの商品、続々登場

 シマエナガをモチーフとしたお菓子やグッズも人気だ。

 札幌市を中心にカフェを展開する「MORIHICO.」直営の洋菓子店「マリピエール」では、週末に1日20個限定でシマエナガを模したココアティラミスを販売。1人2個までだが、午前中に売り切れることもある。

 小樽市の和菓子屋「つくし牧田」では、昨年12月からシマエナガを模した練り切りを販売。4月中旬にテレビで紹介されると1日で約300人から注文があり、一時販売の受け付けを止めた。牧田浩司代表(58)は「シマエナガがそこまで人気とは。こんなにすごい反響があるのは初めてだ」と驚く。5月中旬ごろには、受注を再開したいという。

 シマエナガをモチーフとした雑貨をオンラインなどで販売するブランド「ぴよ手帖」は、イベントに出店すると行列ができることもある。運営するイラストレーターの女性(33)はこれまで、200種以上の商品を手がけた。5年ほど前は「白いひよこだ!」などと言われたが、最近は「シマエナガだ!」と名前で呼ばれることが増え、認知度が上がっていることを実感する。道産子だという女性は「シマエナガを通して北海道に興味を持ってくれる人が増えてうれしい」と笑顔で話す。