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 新型コロナウイルスへの緊急経済対策を盛り込んだ補正予算案が28日、衆院予算委員会で審議された。自民党は岸田文雄政調会長、立憲民主党は枝野幸男代表が質問。与野党それぞれの立場から首相をめざす2人は、危機対応にあたる心構えを示しながら、政府に注文をつけたり疑問をただしたりした。

自民・岸田氏「性善説に基づいてやるべきだ」と説く

 この日、最初に質問に立った岸田氏は「政治のトップリーダーが性善説に基づいて、迅速にやるべきだということをしっかり訴えることが何よりも大事だ」と安倍晋三首相に訴えた。

 岸田氏が取り上げたのは、企業が支払う賃金の一部を支援する「雇用調整助成金」だ。約18万件の相談に対し実際の支払いが282件にとどまっていることを指摘。手続きの煩雑さや対応の遅れを問題視した。首相も「今は非常時。内閣総理大臣たる私の責任として(迅速に現場に)やってほしい」「不正などは事後対応を徹底すればよい」と応じた。

拡大する写真・図版衆院予算委で質問する自民党の岸田文雄政調会長=2020年4月28日午前9時2分、岩下毅撮影

 岸田氏は飲食店などを経営する中小事業者への家賃支援なども求めたうえで、「連続攻撃、波状攻撃、次々と手を繰り出すことが大事だ」と追加対策の検討も求めた。

 新型コロナをめぐる対策では、岸田氏は首相とともに減収世帯への30万円給付案を主導したが、与党内の反発を受け土壇場で1人10万円の一律給付に変更された。予算委は、岸田氏にとって失地回復をアピールできる場でもあった。

 対策の加速と着実な実行を重ねて求めた岸田氏。首相から「国民の命と健康と生活、そして雇用を守るためにやるべきことはちゅうちょなく断行していきたい」との決意を引き出し、自らは最後に「自民党も政府に物を言いつつも、しっかり支えていく」と締めくくった。(西村圭史)

立憲・枝野氏「正常化バイアス陥ってないか」と追及

 東日本大震災発生時、民主党・菅直人政権の官房長官として危機対応を担った枝野代表。その教訓と反省をもとに、新型コロナという危機に直面する政権の対応について「正常性バイアスに陥っているのではないか」と異議を突きつけた。

 正常性バイアスは非常事態を正常の範囲内と過小評価することを意味する。その結果、対応が遅れることがあり、枝野氏は災害時には最悪を想定する必要があると主張。津波被害と原発事故が起きた大震災を「想定した最悪よりもさらに悪化した場面も」と振り返り、首相に「最悪を想定しているか」とただした。

拡大する写真・図版衆院予算委で質問する立憲民主党の枝野幸男代表=2020年4月28日午前10時40分、岩下毅撮影

 そのうえで、新型コロナの収束後に旅行などを喚起するキャンペーン費用約1・6兆円を引き合いに、「家にいてほしいとお願いする局面で収束後に旅行を振興しましょうと。これこそ正常性バイアスに陥っている象徴ではないか」と指摘した。「急がない予算は棚上げし、執行を停止することが最悪に備えるという姿勢だ」と述べた。

 これに首相は「正常性バイアスには陥っていない」と真っ向から反論。キャンペーン費用について「事業継続への意欲を持ってほしいという観点から盛り込んだ」と述べた。

 質問後、枝野氏は記者団に「首相の答弁のトーンも中身も、平時とあまり変わらなかった。提案に正面から向き合ってもらえない」と述べた。野党の発信力不足を指摘する声も上がるなか「あきらめることなく繰り返し訴えたい」と語った。(吉川真布)