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 新型コロナウイルスの感染は、ある国や地域で爆発的に広がり、他の場所では抑え込まれつつある。偶然の結果ではなく、それぞれに理由があると、感染症対策の第一人者、デイビッド・ヘイマン氏は指摘する。エボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)への対応に長年携わった経験をふまえ、現状を読み解いてもらった。

David Heymann
英王立国際問題研究所特別栄誉研究員。1946年米国生まれ。インドで天然痘撲滅事業にかかわった後、米疾病対策センター(CDC)や世界保健機関(WHO)でエイズ、エボラ出血熱、SARS、ポリオなどの専門家チームを率いる。WHO事務局長補を経て現在はロンドン大学衛生熱帯医学大学院教授を兼務。

 ――中国で新型コロナウイルスが検出されたと報じられて3カ月半。新型コロナの脅威に早々とさらされたアジア諸国の多くは、これまで被害をかなり食い止めているように見えます。苦戦しているのはむしろ、当初傍観気味だった欧米諸国です。どうしてこうなったのでしょうか。

 「アジアの国々の多くは2002~03年にSARSの大規模な感染拡大を経験しました。失敗を教訓としてベッド数を増やし、人工呼吸器を備えるなど対策を進めた結果、今回は効果的な治療ができたのです。これらの国では、病院へのアクセスが常に確保されていましたが、逆に、欧州各国はこのような準備ができていませんでした」

 「香港や韓国などは感染者の行動を丹念に追跡し、接触者を特定することの重要性をよく理解しています。小規模の感染拡大が起きたら諦めずに封じ込もうとし、市中への広がりが最小限に抑えられました。感染を防ごうとする市民の連帯も支えです」

 ――欧州は違ったと。

 「アジア以外の多くの国は感染者の行動を把握できず、追跡を途中でやめてしまいました。病院で患者を選別したり、中国と同様に都市封鎖に踏み切ることで病院に行く人の数を絞ったり、といった対応に集中することになったのです。アジア各国で行動制限が少ない一方、欧米では相次いだのも、これが理由でした」

 ――以前はアジアもそれほど意識が高くなかったのでしょうか。

 「SARSが流行した際に、私はWHOで緊急対策専門家会合の議長をしましたが、中国は最初、WHOに情報を出そうとしませんでした。業を煮やした当時のブルントラント事務局長が「異変があったらすぐに報告せよ」と公然と批判したのです。中国は慌ててWHOにも協力するようになり、強力な感染防止策も打ち出しました。つまり、SARSを機に世界の結束が築かれ、WHOもリアルタイムの対応策を示すことができるようになりました」

 ――ほかにもアジアに特有の背景はありますか。

 「共通しているのはマスクをする習慣です。SARS流行よりずっと前から定着しており、今回も感染を防ぐのに役立っています。手をよく洗うのも、アジアならではの文化です」

 ――欧州では北イタリアでの被害が衝撃的でした。

 「国による死者数の違いは病院の受け入れ能力と社会の年齢構成から説明できます。イタリアの特徴は人口に高齢者が占める割合の高さで、65歳以上は20~25%に達します。多くは高血圧や糖尿病、慢性疾患などを抱え、合併症を引き起こしやすい。若者と高齢者が一緒に暮らす生活スタイルも、被害が広がるきっかけになりました。アジア諸国の場合とは異なり、感染した高齢者を受け入れる病床も十分確保できていませんでした」

 「当局は当初、被害を地域で封じ込めようと試み、人々の外部への旅行も禁止しました。ただ、その間にも、多くの人の集まるスポーツイベントが開かれました。そこに来た若者たちが感染し、そのまま、家に帰る。その家にはお年寄りが暮らしている……」

 ――ただ欧州も一様ではなく、被害がそれほど広がらなかった国もあります。ドイツは、イタリアほど死者を出していません。

 「ドイツでは、イタリアとは対…

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