拡大する写真・図版カンボジアのフン・セン首相=ロイター

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 ベトナムとカンボジアを担当するようになって、「報道の自由」や「表現の自由」について考えさせられることが増えた。カンボジアでは35年にわたって首相の座にあるフン・セン氏が、自身への批判に対する締め付けを強めている。ベトナムでも表現の自由には制限がある。どちらの国でもSNSへの投稿の内容によって身柄を拘束されたり、罰金を科されたりする。しかし、政府のそうしたやり方に大きな反発が広がっているわけではないのも現実だ。

 「バイクタクシーの運転手はお金がなければバイクを売れ。政府に助ける力はない」。カンボジアのフン・セン首相が4月7日に記者会見で述べたこの発言をフェイスブックに投稿したニュースサイトの記者ソワン・ルティさんが逮捕された。首相の発言を引用したことについて、何を責められねばならないのか。治安当局によると、ソワンさんの投稿は「社会の安全や秩序を脅かす犯罪を扇動した罪」にあたるのだという。情報省の報道官は地元メディアに、「首相が冗談で発言した部分を都合のいいように切り取るべきではない」と述べている。ソワンさんは最高で2年の懲役か400万リエル(約10万円)の罰金を科される恐れがある。

 カンボジアでは2017年ごろからメディアへの締め付けが強まってきた。フン・セン首相に批判的な論調が目立つ報道機関は閉鎖に追い込まれ、記者の逮捕も相次いだ。米政府系ラジオ局ラジオ・フリー・アジア(RFA)のニュース番組司会者兼記者だったイエン・ソティエレンさん(37)もその一人だ。RFAが17年9月に政府の圧力でプノンペンの事務所を閉鎖した2カ月後、外国に渡すために安全保障にかかわる情報を集めたスパイ容疑で逮捕された。国際NGOなどからは「でっち上げだ」と批判が相次ぎ、イエンさんも無罪を訴えたが、保釈されるまで272日間を刑務所で過ごした。今も判決は出ておらず、有罪になれば最高で懲役15年が科せられる。

 私は今年1月にベトナムのハノイに赴任した。カンボジアも担当しており、プノンペンで最初に取材したのがイエンさんだった。取材から約3カ月が過ぎた今でも、刑務所での日々を語り出した途端に涙を流した彼の姿が目に焼き付いている。

拡大する写真・図版ラジオ・フリー・アジアの元ニュース番組司会者兼記者で今はフリーで活動するイエン・ソティエレンさん=2020年1月28日、プノンペン、宋光祐撮影

 どうして記者になったのか。インタビューの終わりごろ、ふと思いついた疑問をぶつけてみた。「階級社会のカンボジアでも、ジャーナリストになれば草の根の市民から権力者までいろいろな人に会って話が聞けるから」。イエンさんの答えは、私が記者になった理由とも重なっていた。

 同じ職業なのに国が違うだけで…

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