阪神支局襲撃から33年 広がる不寛容、どう向き合えば
朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件は、1987年5月3日の憲法記念日の夜に起きた。「反日朝日は 五十年前にかえれ」。言論の自由を否定する犯行声明文を残した「赤報隊」は姿を消し、事件は未解決で終わった。あれから33年。言論をめぐる状況はどうなのか。新型コロナウイルスの感染拡大で中止となった「言論の自由を考える5・3集会」に登壇予定だった4人が語った。
元キャスター 村尾信尚さん「不自由な社会」
社会で分断が進んでいる。匿名性というネット社会の負の面が出ているのだろう。心ない意見を恐れ、心の中で抑制する忖度(そんたく)のようなものが働いている。政治の現場では、安倍政権が、「こちら側」と「あちら側」に分けているように見える。不自由な社会だ。
キャスター時代も不自由があった。テレビは視聴率が命で、そことのせめぎ合いだ。例えば、大相撲の暴行事件。連日トップニュースで、視聴率は高い。でも、米国トランプ大統領の政策など重要なニュースはたくさんあるのに、なぜトップなのかとスタッフと何度もやりあった。
歴史をひもとくと、戦争へと突き進む政府は世論を一つにする。それを防ぐためには、言論、表現、学問の自由が不可欠だ。ただ、こうした点に関心のない人もいて、どう伝えるかが問われている。難しい言葉で伝えても、自己満足で聞き手には伝わらない。僕は人口減少を伝える時、多くの人が身近に感じている宅配便の人手不足から取り上げた。意義が伝わらないとすれば、語り手が工夫を怠っているからだと思う。
◇
〈むらお・のぶたか〉 2006~18年「NEWS ZERO」キャスター。近著に「B級キャスター」。
映画監督 天野千尋さん「芸術、すぐ自粛」
日本では国の文化的支援が厚…