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 刑事事件の被告らを収容する拘置所で新型コロナウイルスの感染が相次ぐ。密集・密閉・密接の「3密」空間に置かれた収容者をどう処遇するか。不十分な感染防止策や、家族らの面会を制限するなどの対応に、弁護士側から人権侵害を懸念する声が上がる。

 「いつ自分も感染するかわからず不安な日々を送っています」

 職員8人が感染した大阪拘置所(大阪市都島区)に収容中の男性被告は先月8日と14日、弁護人に手紙で新型コロナ感染への不安や、各地で始まった面会制限への不満を訴えた。

 大阪拘置所に収容中の被告・受刑者らは計約1100人。個室の「単独室」と、7~8人まで収容できる10畳ほどの「共同室」で生活。判決が確定していない「未決勾留」の被告の収容者は平日の1日30分ほどの運動や原則週2回の入浴などを除けば、食事も含めて1日の大半を部屋で過ごす。

 男性の手紙によれば、男性は共同室とみられる部屋に計7人で生活。新型コロナへの感染が不安だとして拘置所側にマスクの配布を求めたが断られ、感染者などの具体的な情報も教えてもらえなかったという。

 男性はさらに、法務省が先月8日から各地の拘置所などで始めた弁護士以外を対象にした面会制限で、「唯一の楽しみ」だった知人女性と面会できなかったと説明。事前に申請すれば利用できる弁護人とのテレビ電話での接見時間も20分間に限られると訴えた。

 同拘置所に収容中という別の男性も先月中旬、朝日新聞に手紙を寄せ、「マスクが配布されない」などと訴えた。収容者の中には、感染が判明した拘置所職員らと至近距離で接した可能性のある者もいるとみられ、十分な対策が講じられなければ拘置所で感染が一気に広がる危険もある。

 大阪拘置所によると、先月28日から共同室の収容者を対象に、所内の配膳作業で使う紙マスクを1枚ずつ配布したという。担当者は朝日新聞の取材に「感染予防対策を検討した結果、強化できると考えた」とする一方、「部屋数にも限りがあり、収容者を分散させるのは困難だ」と説明する。

 元刑務官で作家の坂本敏夫さん(72)は「収容者の行動範囲は極めて狭く、典型的な『3密空間』だ。マスクの配布があまりにも遅く、危機感が薄い。収容者の分散も人手が必要になるが、決して不可能なことではない」と指摘する。(細見卓司)

職員の感染相次ぎ

 大阪拘置所で初めて職員の感染が判明したのが先月5日。その後数日おきに次々職員の感染が明らかになり、17日には8人目の感染者が発表された。東京拘置所でも11日、60代の男性被告の感染が確認された。

 法務省などによると、感染した大阪拘置所の職員8人はいずれも処遇部に所属する刑務官。拘置所で使う日用品の管理や施設の補修などに懲役の刑務作業として従事する受刑者の指導や、被告らに許される運動の監視などを担当していたという。感染した職員たちは同じ食堂や仮眠室を使ったり、武道を一緒にしたりしたなどの共通点があったが感染経路は特定されていない。

 同拘置所は、感染した職員に接触した可能性のある職員のうち、最大で全体の4分の1にあたる約150人を自宅待機とし、近隣施設から応援を投入。収容者60人も単独室に隔離するなど、感染防止に異例の態勢をとる。

 法務省は先月27日、医師や専門家らの意見をもとに、全国に283ある刑務所や拘置所、少年院などに特化した新型コロナ対策のガイドラインを策定。職員の公共交通機関の利用を控え、自家用車で通勤する▽仮眠室や執務室などの定期消毒を実施する▽収容者の運動や入浴の際、1回当たりの人数縮小で収容者間の距離を確保する▽新規の収容者は単独室に14日間入れて毎朝夕検温する――などの対策をとるとしている。(森岡みづほ、板橋洋佳)

■面会できず、人権侵害との…

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