トヨタ減産拡大 旗印「国内生産300万台」の行方は
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、トヨタ自動車が、5月の国内生産を当初計画から半減させる見通しになった。世界的な車需要の低迷が長引くとみて、国内の減産を拡大する。ものづくりの基盤を維持するとしてトヨタが掲げてきた「年間生産300万台」にも影を落とし始めている。その数字が意味するものとは。
5月1日、トヨタの国内全15工場が操業を停止した。当初から予定していた大型連休をはさみ、11日も操業を停止。12日以降もハイブリッド車のプリウスなどをつくる堤工場(愛知県豊田市)を含めて5工場9ラインで最長5日間(稼働日ベース)操業を停止するなど生産調整が続く見通しだ。
部品メーカーには、5月の生産は当初計画から半減、6月は約4割減と伝わっている。4月30日にあったトヨタ系部品メーカーの決算では、「コロナ前の水準に回復するにはかなりの時間が想定される」(デンソーの有馬浩二社長)など、次々に厳しい現状認識が語られた。
自動車は裾野が広く、他の産業以上に及ぼす影響が大きい。日本自動車工業会など関連4団体が4月10日に開いたネットでの記者会見。自工会の豊田章男会長(トヨタ社長)は、「自動車には他の産業へ波及する力がある。踏ん張って経済を回し続け、雇用を守っていくことが(経済の)崩壊を食い止める大きな力になる」と述べ、こう続けた。「リーマン・ショックとその後の東日本大震災。苦しかった当時、私は国内生産に強くこだわった。日本にものづくりを残すと決意し、それは間違いではなかった」。コロナ禍からの復興時には、自動車産業が経済の牽引(けんいん)役を担っていく決意も強調した。
トヨタを筆頭に、自動車は空洞化が進んできた国内製造業の最後のとりでともいえる存在だ。とはいえ、国内の新車市場は1990年をピークに縮小。若者の車離れや人口減など市場の先行きは厳しい。自動車各社は伸びしろがあるうえ、為替に左右されにくい海外シフトを進めてきた。
最大手のトヨタといえど事情…