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 カラフルなTシャツを着た8人の男女。それぞれの写真を1枚に組み合わせた画像がインスタグラムに投稿され、話題になっている。よくよく見ると、それぞれの胸元には別々の1文字が。並べるとこんなメッセージになる。「祇園は負けまへん」――。この8人はいったい?

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 「それでもやっていくぞ、という気持ちを表したくて」

 そう話すのは、メッセージの呼びかけ人、長谷麻理子さん。祇園でナイトクラブ「CLUB RIKI」を営むママだ。「ま」のTシャツの人でもある。

 青や赤、黄、緑など、別々の色のTシャツに、1文字ずつ。マスク姿で元気よくガッツポーズなどで写る8人はいずれも、祇園の店の経営者たちだ。

 カラオケラウンジや、居酒屋、クラブ、バー、焼き肉店と、業種はさまざま。長谷さんの友人や仕事仲間たちだという。

 5月15日にそれぞれのインスタなどに投稿すると、「頑張れ祇園」などのコメントや、多くの「いいね!」が付いている。

 画像の明るさとは裏腹に、「今ほど厳しいときはない」と長谷さんは声を沈めた。京都随一の繁華街に店を開いて19年目。4月の売り上げは、前年同月と比べて1%に満たない。

 新型コロナウイルスの影響で、祇園の人通りは激減した。長谷さんは3月は予約がある日だけ店を開け、4月も休業要請が始まった18日を待たず、閉めることにした。休んでも家賃や、従業員の給料などで月約250万円はかかる。子どもの学費や住宅ローンも。

 「政治家は苦しさをぜんぜん、わかってへんと思います」

 そんな中、友人が「コロナに負けない」というメッセージを、Tシャツで発信しているのを知った。

 仕掛けたのは印刷加工業などの「アートライン京都」(京都市左京区)。同社も、例年なら大学サークルや高校の体育祭で着る、おそろいTシャツなどの注文の書き入れ時だが、今年の注文はほぼゼロだ。

 「売り上げは去年に比べて85%くらい減ってます」。そう話す代表取締役の櫻﨑仁志さん(55)が、京都を盛り上げようと5月に始めたのが、在庫のTシャツを無料で提供し、それぞれの「スローガン」を発信してもらうことだった。

 1枚に1文字にしたのは、「現実には集まれなくても、SNS上で集まれば一緒に楽しめる。勇気も出る。それぞれの仕事のPRにもなるのではと思って」と櫻﨑さん。

 長谷さんが祇園の仲間に声をかけると、1時間足らずで7人の賛同者がそろった。選んだ言葉が「祇園は負けまへん」だった。

 自粛要請が終わっても、客足が戻るには時間がかかるかもしれない。SNSで発信しても、営業効果は薄いかも。それでも――。そんな思いを込めた。

 「同じ気持ちの祇園の経営者はもっといます。画像を見て、少しでも元気になってもらえたら」。そう長谷さんは言う。(権敬淑)