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 政府の専門家会議が1日にまとめた提言では、厚労省のクラスター対策班が分析している「接触頻度」のデータが示された。政府目標の「接触機会の8割削減」の達成度がわかる指標として位置づけられた。クラスター対策班で分析の中心となる西浦博・北大教授は会見で「80%の達成はできた所とできなかった所がまだらだった」と述べた。

 政府はこれまで、NTTドコモなどから提供された携帯電話端末の位置情報の集計を活用し、駅周辺などでの人出の減少率を公表してきた。今回新たに、同時刻に同じ区域にいた端末の数をもとにした接触の度合いを加味し、計算式に基づいて接触頻度を算出した。

 接触頻度を感染拡大前の1月17日と4月24日(ともに金曜日)を比べると、東京・丸の内周辺では、昼間は69%と政府目標に満たなかったが、夕方から夜間にかけては81%で達成していた。渋谷駅周辺では昼間は49%、夕刻から夜間にかけては62%と、丸の内に比べて減少幅は小さかった。

 渋谷駅を年齢別にみると、10歳代と20歳代は80%を超えたが30歳代以上では満たなかった。大阪市の難波駅周辺でも同様の傾向が見られた。提言は、若者の減少は休校、30歳代以上はリモートワーク(遠隔勤務)の進み方の影響を受けたものとしている。

 また、端末所有者の居住地域別では、神奈川・千葉・埼玉の3県と、東京都との間の接触頻度の減少率は昼間、35~41%と小さかった。大阪を中心とする関西圏でも同様の傾向がみられた。これは東京と大阪のオフィス街への他府県からの移動を反映しているとみられ、提言は「都心等への通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いは少ない」と結論した。西浦教授は会見で、「都心との通勤を続ける限りは、(強制ではなく)自粛要請のレベルでは限界があることがデータからわかった」などと述べた。

 専門家会議では今後、こうしたデータをもとに緊急事態宣言の地域ごとの扱いについて議論するという。

 携帯電話やスマホなど、携帯端末の位置情報を利用した大規模な疫学調査は、新しい手法だ。保健所の職員が質問によって情報を集める従来のやり方を補う手法といえ、新型コロナ感染でも中国・武漢での都市ロックダウンの効果の分析に活用した事例などが論文で公表されている。

 ただし、今回分析に使った位置情報の精度は500メートルと粗いうえ、通勤などの移動者だけでなくそこに住み外出を自粛している人の端末もカウントしてしまうといった課題がある。西浦教授によると、別途インターネットを通じたアンケートによる接触率調査も進行中で、近く結果をまとめるという。

 今回の専門家会議の分析結果の詳細はウェブサイト(https://github.com/contactmodel/20200501/blob/master/0501_public.pdf別ウインドウで開きます)で公開されている。(嘉幡久敬