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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための入国規制で、水産業界が危機に直面している。受け入れ予定の外国人技能実習生たちが来日できず、人手不足が広がりつつあるからだ。水産のまち、宮城県石巻市は、休業中のホテルや飲食店の従業員を短期的にあてがえるように緊急支援に乗り出す。

 昨年の取扱高が10万トンと全国の漁港で5位だった石巻港の魚市場周りには約60もの水産加工会社が集まる。その一つ、魚の西京漬けなどを製造・販売する食品会社の常務、水野貴竣(たかとし)さん(47)は頭を抱える。

 工場の従業員の3分の1が実習生で、ミャンマーからの13人が働く。受け入れ期間は最長5年で、うち5人は今月に期限が切れる。代わりに新たな5人がやってくるはずだったが、新型コロナの影響で来日できない。「日本人従業員を集められずに外国人に頼ってきた業界なのに、仕事が成り立たなくなる」と水野さんは言う。

 実習生の受け入れを担う市内の団体によると、石巻の水産業で働く実習生は約800人にのぼる。

 漁船の操業も深刻だ。漁業協同組合の一つでは、計20隻の船の乗員としてインドネシアから50人を受け入れている。このうち十数人が6月に期限が切れる。組合の担当者は「人が足りなければ船を出せなくなる」と心配する。

 市水産課が、実習生を受け入れる水産加工業の48社を調べた結果、今月以降、17社で計53人の代わりを手当てできないことがわかった。漁船に乗る実習生も34人が不足するという。

 石巻の水産加工業者の生産額は年間500億円近い。資材や運送、機械製造など関連業者の裾野は広く、水産業が打撃を受ければ市の経済への影響は甚大だ。

 市が目をつけたのは、休業中のホテルや飲食店などの従業員だ。「雇用維持のために、休業中なのに会社は給料を払い続け、余剰人員になっている」(担当部長)とし、入国規制が解けるまでの期間、人手が足りない水産加工会社での雇用を促す。

 550万円の予算を充て、月内に人材派遣業者に業務を委託する。各社から希望を募り、今月半ばにもマッチングにこぎ着けたい考えだ。

 1日の臨時市議会では、ホテルの従業員らが水産加工会社で働いた場合の給与の差が議論になり、市の担当部長は、給与の不足分を市が補塡(ほてん)したいとの考えを示した。それでも、人材不足が解消できなければ、追加の支援策を打ち出すという。(岡本進)