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 スポーツイベントの中止や延期が続く。「球音のない春」のいま、大の高校野球ファンで知られるタレントの渡部建さん(47)は、つらい時期を乗り越えてたくましくなった選手たちの「すごいプレー」に思いをはせている。(編集委員・安藤嘉浩

拡大する写真・図版タレントの渡部建さん=東京都新宿区の神宮球場、山本和生撮影

 「お疲れさまです」。通りがかりに渡部さんから声をかけられたのは1度や2度じゃない。周囲にとけ込んでいて気づかないぐらい、阪神甲子園球場や神宮球場などのスタンドに、渡部さんは普通に座っている。

 試合前のシートノックが始まると、話しかけても上の空に。パンフレットを手に、観戦仲間と選手をチェックし始めるのだ。「背番号16の子って、春はいなかったよね」「あのケツがいいねえ。秋が楽しみじゃん」

 何のためにそこまで?

 「いや、単なる趣味です。先物買いっていうか、自分なりの視点で好選手を見つけて注目するんです。素人の目ですから役には立ちません。だけど、楽しいんですよ」

 昨秋も神宮球場で一緒になり、3月に開催予定だった春の甲子園大会での再会を約束した。「最低2日は観戦できるよう、スケジュールを調整していたんですけどねえ」

春と夏、当たり前に楽しめるもんだと…

 新型コロナウイルスの影響で、待ちに待った球春は、いまだ訪れない。渡部さんが生の野球に触れたのは、ファンでもある阪神タイガースの沖縄の春季キャンプを、仕事も兼ねて2月に訪問したのが最後になる。

 春の甲子園大会は当初、無観客試合が検討された。「選手のことを考えると、それでも開催してほしかった。だけど、他のスポーツがどんどん中止になる中、無観客でやったとして、選手が晴れやかな気持ちになれたかどうか……」

 そして改めて気づいた。「当たり前に高校野球は春と夏にあり、普通に楽しめるもんだと勝手に思っていました。いろんな環境が整って、平和だから開催できる祭典なんだと痛感した。再開されたら、ありがたみを感じて応援したいと思います」

拡大する写真・図版2012年、甲子園球場で観戦したアンジャッシュの渡部建さん

 渡部さんが高校野球にはまったのは2009年夏から。自身は中学で野球をやめていたが、母校の都立日野が、同年5月に亡くなった卒業生・忌野清志郎さんの「雨あがりの夜空に」を応援曲に快進撃を続けるのを観戦した。その後、母校は西東京大会準決勝まで進み、強豪の日大三と打ち合い、惜敗した。

 「生で観戦する面白さを知って秋の関東大会に行ったら、東海大相模(神奈川)にすげえ投手がいた。じゃあ甲子園も行こう。そうやって数珠つなぎにはまっていったんです」

今は「ジャンプの前、しゃがんだ状態」

 いま、球児たちの気持ちを考えると、やり切れない。「でも、それぐらいのことが起きている。東京五輪が延期になっちゃうんだから。つらいだろうけど、あの時があったからいまがあると思える日がきっと来る」

 そのために、いまをどう過ごすか。「高校球児のたとえになるか分からないけど」と前置きし、芸能界きっての「グルメ王」らしい話をしてくれた。

 「飲食店も大ピンチです。資金繰りが厳しくて閉店するお店もある。そんな中でみなさん、工夫されています。テイクアウトやデリバリーを始める。この期間に新メニューを考える、大そうじをする。ただで、この期間を終わらせないと考えていると感じます。お店を再開できたときに爆発しよう。ジャンプの前にグッとしゃがみ込んでいる状態ですね」

 球児たちも同じように工夫していると信じている。「練習時間を限られ、みんなで集まれないチームも多いでしょうが、やれることはきっとある。本を読むとか、家でないとやらないなってことをやる。野球につながる何か、人間性につながる何かを見つけてほしいと思います」

 指導者もいろいろ工夫をしていると耳にする。「SNSで部員とやりとりしたり、家でできるトレーニングを映像で配信したり。10年前、20年前ならできなかった。今でよかった。そういうありがたみもかみ締めて、選手のみなさんも頭を切りかえて前を向いているはずです」

夏開催なら「大変革の気が」

 いまはただ、再び高校野球を楽しめる日を心待ちにする。

 「夏の甲子園が無事に開催できたら、ぼくは大変革が起きる気がするんです。いつも甲子園に出てくる学校が来られなかったり、全然知らない高校が力をつけていたり。初出場校が増えたな、だけど、あの高校はやっぱり強かったな、とか」

 「3月以降、いまをどう過ごしたかが問われるじゃないですか。全体練習が減った分、個人の時間が増えている。すごい筋肉をつけて、とんでもないスピードボールを投げる投手が現れたり、めちゃくちゃ打球を飛ばす打者が出てきたり。いろんなことが起きるんじゃないか、新しい歴史を目撃できるんじゃないかとワクワクしています」

拡大する写真・図版タレントの渡部建さん=東京都新宿区の神宮球場、山本和生撮影

 ほとんどのスポーツが中止。やきもきするファンと気持ちをひとつにしたいと願う。

 「いまは専門家のアドバイスを守り、みんなで頑張って感染の拡大を防ぐ。その先に楽しみが待っていると、僕らは信じています。Jリーグもプロ野球もBリーグも早く見たい。東京五輪もぜひ開催してほしい。いつもは全国どこへでも出かけるスポーツファンこそ、みんなで力を合わせて家にこもる。過去の名シーンを思い出し、未来の名シーンに思いをはせましょう」

 <わたべ・けん> 1972年、東京都八王子市生まれ。大学在学中の93年に、高校の同級生だった児嶋一哉さんとお笑いコンビ「アンジャッシュ」を結成。「微力ながらコロナ禍の飲食業界を応援したい」と、現在は飲食店を紹介するテレビ、雑誌などの仕事をギャラなしで受けている。「渡部の歩き方 グルメ王の休日」(幻冬舎)を近日発売予定。YouTube「アンジャッシュ渡部チャンネル」でも発信中。